ものづくりに携わる仕事に興味がある人や、実際にものづくりをする会社で働いている人のなかには、資格を取得してスキルを高めたいという人がたくさんいるのではないでしょうか。
ものづくりに役立つ資格にはさまざまな種類があり、資格を取得することで、対応できる仕事の幅が大きく広がります。
本コンテンツでは、ものづくりで一番大切な品質を管理する力量のレベルを認定してもらえるQC検定を紹介します。
QC検定で派遣社員から正社員へ転職を成功させた経験談
QC検定のQCは、Quality Control(クオリティコントロール)の略で、「品質管理」のことを言います。
実用英語技能検定が英検と略して言われるように、QC検定も正式名称は品質管理検定と言いますが、長ったらしいので、普通はQC検定と言います。
ここで、QC検定にまつわる私の経験談を紹介します。
私が勤務している会社に派遣社員として勤めていた人(Aさんとしておきます)の話です。
Aさんは、普通科の高校を卒業後、中堅企業に営業で入社したとのことでしたが、ノルマがきつく、パワハラにも悩まされて2年ほどで退職したとのことでした。就職活動をしてもなかなか決まらず、結局派遣会社に登録、私の勤務先の工場の、部品加工ラインの作業員として派遣されてきました。
Aさんは、最初はほとんど何もできませんでしたが、本人に意欲があったのか、一年もすると、その加工ラインのサブリーダーに抜擢されました。
私は品質管理を担当していますが、製造での品質問題に対応するために、しょっちゅう加工ラインに顔を出していましたので、Aさんとはすぐに知り合いになり、管理図の書き方や、寸法不良が出たときの原因の調査の仕方など、時々聞いてくるようになりました。
もちろん、その加工ラインにはリーダーもいますが、交代勤務で聞けない時に、教えて欲しいと言ってくれました。
聞かれると、うれしいものでいろいろ教えているうちに、Aさんが真面目に仕事に向き合っているのがわかりましたので、提案しました。
「品質管理のことをもう少し、体系的に勉強してみないか? 今、僕に聞いていることをもっと体系的に理解できるようになると思うよ。」
「そして、勉強した成果を確認するために、QC検定を受けてみたらどうかな。」
実は、わたくしも品質管理チームに移動になったときに、いろいろわからないことが多く、苦労した思い出がありました。これではダメだと思い、品質管理を体系的に学ぶ手段はないかと思い、ググっているときにQC検定を見つけて、2級を受験しました。
QC検定の試験は、定評のある参考書と過去問題集を、それぞれ1冊ずつ仕上げれば、何とか合格できるのでは、と思っていました。もちろん、Aさんが勉強熱心で、これをすると決めたら実行できる性格と読んでいましたが。
「頑張れば社員になれるかも知れないね。わからないところがあったら、僕がわかる範囲なら教えるよ。」
と言って、AさんにQC検定3級の受験を提案しました。
彼はまじめでしたので、受験しようと思い立ってからおおよそ4カ月くらいしかありませんでしたが、無事一発で合格しました。
結局、Aさんは合格後しばらく一緒に仕事をしていたのですが、正社員で採用して貰える企業を見つけ、転職していきました。それはそれで、おめでたいことでした。
QC検定に限らず、自分の仕事に関係する資格が見つかれば、積極的に受験することは良いことだと思います。合格すれば新しい道が開ける可能性もあります。
もし、残念ながら不合格になっても、次のチャンスがあるし、少なくともそれまで学習したことは仕事に生かせるので、資格の勉強はドンドン行うべきです。
ちなみに、私が移動になったころの品質管理チームでは、QC検定のことを知っている人はいませんでしたが、私がQC検定を取得したことにより、他のメンバーも受験するようになり、品質管理チームのメンバーは全員2級か3級のどちらかを持つようになりました。
1.QC検定って何なの?
製造業系の企業人や理系の大学生なら、QC検定について聞いたことがあるかも知れませんね。
QC検定の検定は、簿記検定や漢字検定の検定と同じ意味です。つまり、受験した人の知識や力量が一定のレベルに達しているかどうかを計るもので、レベルに達していると判断されると合格証がもらえます。
QC検定の資格試験は年2回(3月・9月)実施されます。合否は筆記問題によって客観的に評価されます。
職場でどんな仕事を担当するか、その仕事に必要な品質管理や品質改善はどの程度のレベルかなどによって、QC検定は1級から4級までに区分されています。数字が小さいほど難しいです。
QC検定を取得すると、QCに対してどれくらいの知識を持っているかの証明になります。品質管理の部署はもとより、設計や生産技術の部署でも、昇進の条件にQC検定取得が求められている企業もあります。
また、品質管理は製造業だけのものではありません。今や病院や飲食店のようなサービス業でもISO9000(品質マネジメントシステム)の認証を取得しているところが、多くあります。
この品質マネジメントシステムは、品質が管理されている状態にあるかを、定期的に監査して、合格すれば認証してもらえます。
ものづくりとはあまり関係が無いように思われる部署でも、サービスの質を求められることが多いです。
従って、QC検定は工場だけのものではなく、企業の間接部門や、病院、飲食店のようなサービス業に従事している方でも、取得することにより、皆さんの仕事の質を上げることが可能です。
2.社会人なら、QC検定4級をとってみよう
QC検定の1級から3級までは、品質管理の手法が中心で「品質管理の実践」、「品質管理の手法」というくくりで品質管理の知識を問うものですが、QC検定4級は、それらに加えて「企業活動の基本」というくくりで、企業に勤める人にとって必要なマナーや安全衛生に対する知識も問われるようになっています。
つまり、QC検定4級を受ける人は、品質管理を含めた社会人として必要な心構えを持っているかを問われます。
また、私たちが使う品質という言葉は、物の質だけでなく、目に見えないサービスの質も含んでいます。従って、製造現場で働く人ばかりでなく、社会で活動する社会人みながQCについて理解する必要があります。
そういう意味では、QC検定4級は、製造業やサービス業に従事する新入社員や、派遣社員が、品質管理の知識に加えて社会人としてのマナーを理解しているか確認するために、受験するといいと思います。。
QC検定4級は、無料でダウンロードできるテキストがあります。頑張り屋さんのあなたなら、これで学習すればほぼ合格点が取れます。(試験に緊張する人は、過去問題集を購入して、トライするのもいいかも。)
品質マインドを持つためにも、社会人になったらQC検定4級をぜひ受けてみてください。
3.会社員なら、QC検定3級にチャレンジしよう
QC検定3級の受験対象となる人について、主催団体である日本規格協会は、次のような人を想定しています。
- 業種・業態にかかわらず自分たちの職場の問題解決を行う全社員 《事務,営業,サービス,生産,技術 を含むすべて》
- 品質管理を学ぶ大学生・高専生・高校生
もちろん学生さんがチャレンジすることは、将来社会人になったときに、大きなアドバンテージを持つことになりますが、普通は、会社に勤めだして1年くらいたった会社員からがQC検定3級の対象者と考えられます。
品質管理と呼ばれるものは、ものづくりに直接携わる人だけがわかっておればよいものではありません。
品質という言葉は、物(品)の質とサービスの質の両方の意味を含んでいます。自分たちが作り出したもの、それは物品でもサービスでも同じですが、それらを使っていただく人に満足して頂けるようにしなければなりません。
そのために、工場勤務の人間だけではなく、営業マンや事務職、飲食店などのサービス業、更には病院でも、品質管理の考え方は重要です。
QC検定3級の試験範囲は、「品質管理の実践」と「品質管理の手法」です。
「品質管理の実践」では、QC的なものの見方・考え方や、品質の概念や管理の方法、品質保証、品質経営などが問われますが、ビジネスで要求される顧客満足や製造物責任、環境配慮といった内容も出題されます。
「品質管理の手法」では、主にデータの取扱いのための統計的な知識や、QC7つ道具、新QC7つ道具などの問題解決の手法についての知識が問われます。
品質管理の考え方を身に着けることにより、問題が発生した時に、ばくぜんとしてではなく、論理的に解決することができます。
会社に勤めだして、教育期間が終わり一人立ちするようになると、仕事で発生するいろいろな問題を、自分で解決しなければならなくなります。そのときに品質管理的な手法を身に着けていると、周囲の人も納得できる解決方法が得られます。
その力を身に着ける手っ取り早い方法が、QC検定3級を取得することです。
出典: PhotoAC
4.品質管理担当になったら、QC検定2級取得でリーダーとしての信用を保証する
QC検定2級は、3級と比較すると格段に難しくなります。合格率がQC検定3級では50%前後なのに対して、QC検定2級は20%前後になります。
QC検定2級の受験対象となる人について、日本規格協会は、次のような人を想定しています。
- 自部門の品質問題解決をリードできるスタッフ
- 品質にかかわる部署の管理職・スタッフ《品質管理,品質保証,研究・開発,生産,技術》
QC検定2級は、一般的な職場で発生する品質に関係した問題を、自らが中心となって解決や改善することができ、しかも品質管理の実践について十分理解して活動できるレベルの人を想定しています。
QC検定3級がQC7つ道具を使えるレベル、QC検定2級はQC7つ道具を教えることができるレベルなので、2級と3級との間には大きなレベルの開きがあります。
また、QC検定3級までと異なり、品質管理や、品質保証、研究開発、技術、生産部門の管理職やスタッフが受験対象となっており、物品の品質をどう保証していくかを問われる立場の人が対象になります。
QC7つ道具や新QC7つ道具などの手法を使いこなして、他の人をリードできる人材です。さらに、品質経営についての活動も要求されるレベルになります。
また、統計的な手法についても、QC検定3級と比較して、実験計画法や回帰分析、信頼性工学についての知識が問われ、格段に難しくなります。
一方で、QC検定2級を取得すれば、品質管理について、皆をリードする立場であるグループリーダーや管理職となった時に、自信をもって信用を保証できるようになります。
5.QC検定1級をとれば、品質管理のエキスパート
品質管理の管理職やグループリーダーでも、QC検定2級を取得していれば、十分エキスパートで通用しますが、さらに高みを目指して、開発部門や、設計部門、生産部門、調達部門など、部門横断的に発生する品質問題について解決できる人、あるいは品質問題解決の指導的立場になれる人が目指す資格としてQC検定1級があります。
QC検定1級は、一次試験の合格者に与えられる準1級の資格と、論述問題の二次試験も合格した1級の資格とがあります。一次試験と二次試験とは同じ時間内に行われるので、時間配分が難しいといわれています。
QC検定を2級まで取得できた人は、もう少しです。一次試験のマークシート問題は2級の知識を正しく理解できていれば、合格点ラインに到達できます。
二次試験の論述問題は、ある程度の実体験が無いと回答することは難しいといわれていますが、自分の体験だけで書くのはかなり難しいと思われます。
論述問題への対策は、日頃から品質問題が発生した時に、是正・再発防止対策まできちっと行い、文書に残したり、読書やネット上で見つけられる品質問題について、自分なりに解決方法を考える習慣をつけることが大事かなと思います。
QC検定1級を取得すれば、社外にも通用する品質管理のエキスパートとして認めてもらえます。
最後に
QC検定の資格を取得することは、ものづくりに関わる人たちだけでなく、サービスの質を求められる多くの働く人たちが、品質のマインドを持つのに役立ちます。今の自分のあり方を変えて、新しいことへ挑戦する気持ちが生まれます。
挑戦できるレベルからでよいのでQC検定にぜひともトライしてください。
引用画像
- イラスト:自前+イラストAC
イラストAC;タイトル: 指差し工場長(通常),作者: Shrimpgraphicさん,素材のID: 82766
- 文中写真:作業着2名
PhotoAC;タイトル:ファイルを見る製造業の社員8,作者:acworksさん,素材のID:2842983