あなたの街でもきっと開催されている「読書会」
出版業界の不況が話題となって久しく、いまどき「読書会?」なんて思われるかもしれないが、地域名と一緒に検索すると、近くで開催されている読書会にだいたい行き当たる。
その多くが営利や宣伝を目的とせず、極めて個人的な活動のように見受けられる。
ちなみに、私がここ数年数回参加した読書会は、会社員の男性が、比較的長居できるカフェなどで年に数回開催している。自分の都合で、サイトや過去参加者にメールで開催日時・場所を告知。参加費用は無料で、必要なのは各自が店内で飲食する費用だけだ。それぞれがその日紹介しようと思う“本”を多い人で3冊ほど持ち寄り、感想や関連情報を順番に話す。そこから質問やそれぞれの意見が述べられ、盛り上がる時もあれば、そのまま次の人に回る時もある。
誰も何も言ってくれない時は、ちょっと寂しい気持ちになる。そのことをみんながなんとなく感じているから、何か一言でも声をかけようと、少しだけみんなが気を使っているように思う。
主催する男性は、正直、話すことは苦手なようで、なぜこのような会を主催しているのか不思議に思うこともある。しかも、もう10年近く続いているようで、中には彼と親しげに家族の話をしている常連さんもいる。
参加者は毎回10〜15人。「一人10分くらいで」と始まるが、3時間くらいはあっという間に過ぎる。
他の読書会に参加したことがないので断定はできないが、この会の場合は、終始穏やかに淡々と進行され、決して退屈なものではない。
ミッフィーから、話題作まで。
メンバーから紹介される本は多彩だ。
絵本「ミッフィーとフェルメールさん」
まず、ミッフィーの本を私が手に取ることはない。絵本売り場にも行かない。だが、フェルメールとの併記に好奇心がうずく。
子供向けの絵本で、ミッフィーがフェルメールの作品を紹介するという内容。フェルメール展覧会に足を運び、何回か鑑賞しているが、貼付されている解説と合わせて感じるものをそのまま受け取っているだけだが、ミッフィーの(子供向けの)解説を見てみたいと思った。
この本は「こどもと絵で話そう」シリーズの1冊で、他に「ほくさいさん」「マティスさん」もある。
仏文学者であり、古武術家でもある内田氏。雑誌やネットで時々見かける名前だったが、てっきり哲学者だと思い込んでいた。
こちらも「街場シリーズ」として何冊も出版されている。このシリーズの1冊を読んでハマり、続けて他の氏の著作も読了。生き様を語ったロングインタビューも読んだ。
大学教授を定年後、現在は古武術道場での指導の他、執筆活動など。なかにはあちこちのインタビューやエッセイを(乱暴に)編集したような本もあり、がっかりしたこともあるが、高い知力と考察力による歯に衣着せぬもの言いが心地いい。本を出せば売れる、はずである。
誰もがそのタイトルは知っているであろう古典。
読書会のメンバーがわざわざ紹介した理由は、内容もさることながら、現在さまざまな出版社から古典文学の“新翻訳”が出ていることを話したかったからだ。
他のメンバーもそのことを知っていたようで話が盛り上がった。さすが、読書会に集うだけの皆さんである。特に光文社の新古典シリーズが良いそうだ。
以前挫折した「罪と罰」に再度トライしようと思っている。
その他、
- ブレインディみかこ著「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」 (テレビで紹介してたなあ)、
- 朝井リョウ著「何者」 (読んだ!朝井リョウはすごい!)、
- ジョージ・オーエル著「動物農場」 (「1984」に通ずる不気味さ?)、
- 翻訳本「ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂」 (英語版で書かれた新たな視点での万次郎像らしい)
などなど。もちろん、すべてに目を通すことはできないが、メンバーの話を聞いているだけでも、静かにわくわくしてくる。
紙の本へのこだわり
電車の中でのスマホはもう当たり前の光景となったが、その中にポツポツと紙の本を熱心に読んでいる人を見かける。最近、その人数が増えてきているように思うのは、気のせいだろうか。
NHKの朝ドラ「ごちそうさん」で注目を集めた俳優・東出昌大。若手のブレイク俳優という括りにおさまらない、落語や将棋にも精通した読書好きの青年は、「本を読む時間が減るから」という理由で、スマホからガラケーに逆乗り換えしたそうだ。
なかなかちょっと羨ましい。スマホを持たなくてもいい仕事・生活環境なのだろう。
読書会のメンバー誰もが、紙の本を持参する。その中には図書館で借りた本や馴染みの古本屋で出会った本もある。
私はといえば、最近は欲しかった本がすぐに見つかるアマゾン、欲しかった古本が簡単に見つけられるメルカリも多用している。
しかしながら、他の読書会ではタブレット持参で盛んな意見交換が行われているのかもれない。
いずれにせよ、読書と読書会はおすすめである。