Reinhard ThrainerによるPixabayからの画像 かつて私は、C型慢性肝炎を治療する医薬品の開発に携わっていました。 その頃はC型慢性肝炎を治癒に持って行ければ肝細胞がんは予防できるといわれていて、製薬会社はその治療に多くのソースを割いていました。ブレークスルーとなる抗ウイルス剤が開発に成功し(私の会社ではなく、海外の会社です)、C型慢性肝炎はもうしばらくすれば地上からなくなり、肝細胞がんはアルコール性肝炎がなくなれば非常にまれながんになるだろうと予測されるようになりました。 しかし、肝細胞がんはアルコール性肝炎やC型慢性肝炎以外によっても発症することが分かってきました。 肝細胞がんは一般のがんと同じように手術、放射線療法、化学療法及び免疫チェックポイント阻害剤による治療が行われています。さらに肝細胞がんの特有の治療法も存在します。 肺がんでも1年間生存するとその翌年も生存する確率は上がります。これがサバイバー生存率です。サバイバー生存率は生存期間が長くなると長くなることががんセンターなどの研究で示されました。しかし、肝細胞がんは生存期間が長くなってもサバイバー生存率に変化はありません。 肝細胞がんの原因、治療法、サバイバー生存率、そして治験や臨床研究段階の併用療法への参加方法について紹介します。 肝細胞がんの原因 1,2,3)現在の統計では肝細胞がんの原因はC型肝炎ウイルスの感染です。その次がB型肝炎ウイルス感染、アルコール性肝障害になっています。 その割合はC型肝炎ウイルスが80%、B型肝炎ウイルスが15%、その他が5%となっています。肝細胞がんの発生率、死亡率は減少傾向にあります。 原因はC型肝炎ウイルスの感染者の減少です。2020年のノーベル生理学医学賞がC型肝炎ウイルスの発見に与えられました。C型肝炎ウイルスは(B型も同様です)感染力が弱く、血液感染によって人から人に感染します。 血液製剤からC型肝炎ウイルスがのぞかれるようになってから、麻薬常習者による注射器の回し打ち以外に新規の感染者はいないといわれています。抗ウイルス剤がかなりの割合でC型肝炎ウイルスを排除できることから、20年もたてばC型肝炎ウイルスの感染者はいなくなると予測する向きもあります。 C型肝炎ウイルスに感染しても急性の症状はなにもでません。20%程度の人は感染後20年たつと慢性肝炎の症状…