唐突ですが、自分の国で紙幣や貨幣が消え、すべての決済がデジタル通貨で行う日が来たとしたらどう思いますか。
以前から、ブロックチェーン技術に前向きだったフランスは、デジタル通貨の本格的な研究開発を進めていくでしょう。こういった動きはフランスのみならず、中国でも見られ「近いうちにデジタル通貨が発行されるのでは?」という見方もあります。
では、これらを可能にすると考えられている「ブロックチェーンとは何か?」をご紹介したいと思います。
ブロックチェーンとは
ネットワーク上で取引が行われているデータの履歴を、「ブロック」と呼ばれるデータとして整理し、「チェーン(鎖状)」に連結したデータの集合体です。このデータを利用者同士で共有しあう「P2P」により、特定の管理者を持たず、自立的に管理していくシステムをブロックチェーンといいます。
P2Pとクライアント・サーバ方式
P2Pとは「Peer to Peer」を意味しており、利用者間で対等に通信を行う分散型ネットワークです。これとは対照的に「クライアント・サーバ方式」があり、こちらは中央集権型などと表現される通信システムがあります。ブロックチェーンの説明の前に、この2つについてメリット、デメリットを抑えておく必要があります。
クライアント・サーバ方式メリット、デメリット
中央集権型といわれるこの方式は、サービスを提供するサーバがあり、管理者が管理を行っています。利用者はサーバに接続することで、サービスを受けることができます。
クライアント・サーバ方式のメリットは、
- サービスが一極集中して管理しやすい
- サービスを提供される利用者の負担が小さい
- サービスの出所がはっきりしているので信頼性が高い
などがあります。
これに対してデメリットは、
- サーバがダウンするとサービスが利用できなくなる
- サーバに集中アクセスすると回線が込み合う
- 一極集中で管理する都合上、攻撃を受けた場合の被害が甚大
などが挙げられます。
中央のサーバに利用者がアクセスすることでサービスを受けられる
P2Pメリット、デメリット
クライアント・サーバ方式に対し、P2Pは中央にサーバがなく、利用者同士の通信でサービスを運営していきます。
P2Pのメリットは、
- アクセスの集中が無いため回線が込むことはない
- サーバが無いためサービス運営に支障が出にくい
- 分散しているため攻撃を受けても被害が大きくなりづらい
などがあります。
これに対しデメリットは、
- 情報の信頼性が保障されない
- 一度データが流出すると止められない
などがあります
利用者全体が対等で横の繋がりを持っている
P2Pが持つデメリットを克服するブロックチェーン
クライアント・サーバ方式には信頼性があり、P2Pには安定したサービスが提供できる点にあります。ブロックチェーンが目指しているものは、二つの両立です。P2Pを踏襲する通信システムなので、安定したサービスは提供できます。重要なのは、信頼性の部分にあるといえるでしょう。ブロックチェーンには、この問題を克服できるポイントが2点あります。
改ざん不可能なデータ管理
ブロックチェーンは、取引された履歴を整理してブロックにします。それがチェーンで連なっているのですが、前後のブロックは必ずリンクしています。例えば1つのブロックの情報を書き換えた場合、その後に連なるブロックすべてを改ざんしないと、すべての履歴の整合性が取れなくなります。
さらに、マイニングという作業もあります。マイニングとは、ブロックチェーンの履歴が正しいかどうかを確認する作業です。取引が発生するとブロックが作成され、マイニングにより誤りがないと確認されると取引が完了になります。
不正をすぐ発見できるシステム
信頼性を得るもう1つの要素として、情報が他の利用者と共有されている状態にあることが挙げられます。取引の履歴情報は利用者全員が持っており、仮に改ざんが発生したとき、自分の情報のみを変えても他の共有された情報までは変えられません。照合してしまえば不正はすぐにわかってしまうので、改ざんのしようがありません。
左がクライアント・サーバ方式、右がブロックチェーン
ブロックチェーンの活用例
仮想通貨
現在は、ビットコインを筆頭に様々な仮想通貨が存在します。履歴情報が利用者に共有され、改ざんしにくく、仮に改ざんが起こっても不正が発覚しやすいため、ブロックチェーンは仮想通貨の中核となる技術となっています。
ただし、国が発行する通貨とは違い、管理を行う機関がありません。誰かが価値をコントロールするわけではないため、価格の増減が激しいという弱点を抱えています。
追跡機能(トレーサビリティ)
ブロックチェーンは履歴情報から、いろいろな足跡を辿ることができます。例えば、食品がどの農場で収穫され、いつ出荷されたのかを消費者が知ることが可能です。食の安全のため、日本国内でも実証実験が行われています。
著作権保護
改ざんができないという点から、著作物を守ることに利用する動きがあります。著作物は創作時点で権利が発生しますが、法的に守るには手続きが必要です。著作物をブロックチェーン上で紐付けすれば利用者の履歴は残り、足跡を消すことはできません。何より、権利者のものと証明することが可能です。
ブロックチェーン問題点
リアルタイムに反映しない
ブロックチェーンは、1つ1つのブロックが作成されるまでに時間がかかります。例えば、ビットコインの場合、1つ作成されるまでに10分程かかります。記録を残すのみの追跡機能では、さほど問題ではありませんが、取引から決済までをリアルタイムで行う仮想通貨では致命的といえるでしょう。
スケーラビリティ問題
ブロック1つに記録できるデータ量が非常に小さいため、履歴情報が収まりきらないことがあります。その場合、ブロックは破棄されてしまいます。これをスケーラビリティ問題といい、ビットコインでは深刻な問題となっています。
分散型の弱点
ブロックチェーンの分散型ネットワークは、管理者がいないことで問題が発生しています。ビットコインでスケーラビリティ問題があると述べましたが、利用者の間で幾つかの対策が提案されています。しかし、いずれも実行に至っていないのが現状です。
ブロックチェーンの場合、提案を実行するには利用者全体の同意が必要になります。利用者が思いつきでシステムのルールを変更していたら、収拾が付かなくなるので当然といえるでしょう。
管理者がいないということは、サービス全体での責任を負う者がいないということです。民主的といえば聞こえはいいですが、環境の変化に対する即応性が無いのは、ブロックチェーン最大の弱点といえるでしょう。
まとめ
今回は、ブロックチェーンについてご紹介しましたがいかがでしたか。活用例では一部をお伝えしましたが、他にもブランド品の真贋を見極めたり、身分証明の確認や選挙などにも利用が検討されています。いずれも検証段階ではあるものの、将来的には私たちの生活で身近なものになっていくでしょう。
ただ、問題になってくるのがセキュリティです。以前、Googleが量子コンピュータの論文を発表した際、ビットコインが急落する事態がありました。これは量子コンピュータが、ブロックチェーンの改ざんを容易に行えてしまう可能性があるからです。
技術的にはまだ発展途上といえるテクノロジーですが、多くの可能性を秘めていることに変わりはありません。今後の発展が期待されます。