「127時間」観ました。 実話です。アーロン・ラルストンという当時27歳の登山家が、広大な渓谷で岩山を歩いているときに、岩が落ちてきて右腕が下敷きになり動けなくなってしまうという実話を元にした話です。(本人曰く、映画は全体的にかなり事実に近いらしい) もちろん周りには誰もいない。しかも誰にも行き先を言っていない。広大な渓谷に1人取り残される。 そして彼は、今ある持ち物と限られた時間の中で脱出を試みます。 映画自体は1時間33分あって、その事故が起こるのは20分ほど経ってからです。 映像的に凄くかっこよかったのが、岩に腕を挟まれてアーロンが「えっ...!?」って表情になった時に、画面の横に初めて「127 HOURS」ってタイトルが控えめにフェードインしたのは凄くよかった笑 ここからがこの物語の始まりなんだと。一気に身が引き締まって映画の中に放り込まれます。 1. 映像で飽きさせない そして面白いのが、腕が挟まってからの時間はもう舞台はずっと変わらないわけです。動けなくなった場所だけ。 本当に主役はアーロンとその岩だけ。 これだけのリソースで残りの時間を、視聴者に飽きさせずに魅せるという時点で、他の映画とじゃ、やってることも必要とされる技量がまるで違うのですが、そこも巧みに映像で工夫しているんです。 例えば、アーロンが2日目の夜、飢えている中、ビールをものすごく欲っして疼いているシーンがあるのですが、そこに入ってくるカットインがビールの昔のCMの一部なんです。それもいろんなCMの映像の一部が連続で。 CMというのは、"欲しくなるような見せ方に特化"して作られています。 "心身共に疲労している絶体絶命の男がビールを想像している"というシチュを映しながらで、そんな性質をもつCMを、それも残像のようにスタイリッシュにカットインしていくという手法が感慨深かったです。 他にも最初のオープニングでは、街で大勢の人が歩いている映像、大勢でマラソンをしている映像、大勢の車が走っている映像がスタイリッシュに交互にカットインするのですが、それも、「孤独じゃ人は生きられない」という映画のテーマに対しての換喩になってたり、ここにも様々なファーストフード店やカフェの看板(これもCMと同じ人をそそる宣伝)のカットインがあります。 オープニングでどれだけ人は集団で恵まれた環境にいるのかというのを、この…
ファンタジー小説といえばアレックス・シアラー 日本でも人気の高いイギリスの小説家、アレックス・シアラー。 私が彼の本に出会ったのは2006年。2004年発行の『チョコレート・アンダーグラウンド』を読んだのがきっかけだった。彼の書くファンタジー小説はワクワクとハラハラにあふれていて、本を読みながら一緒に冒険をしたような気持ちになる。『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』は私にとって2作目のアレックス・シアラー小説だったが、10年以上の時を経て読み返しても今なお色褪せない。 『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』 わたしの名前はカーリー。いま、わたしにすごいことが起こってる…。おしゃべりで勇敢な12歳の少女、赤毛でそばかすだらけのカーリーが活躍する、ちょっぴり怖いけどハッピーエンドの物語。 (MARCデータベースより) 『 13ヵ月と13週と13日と満月の夜 』 求龍堂 アレックス・シアラー著、 金原瑞人訳 (Amazon.co.jpより) アレックス・シアラーの作品は主人公が男の子のものが多いが、これは珍しく少女が主人公だ。どちらにしてもー男の子でも女の子でも、本物の子どもが語っているのかなと思えるくらいアレックス・シアラーの描く「子ども」は子どもそのものである。だからこそ読み手も大人が書いていることを忘れ、自分を子どもに還して冒険の世界へ入っていけるのかもしれない。また、金原氏の訳も自然で、難しい言い回しも読みにくい表現も使われていない。日本の小説のように違和感なく読み進めることができる。幼稚でもなければ、ただ無邪気なばかりでもない、少女の目線での語り口調に違和感を持たせない翻訳が見事だ。 この『 13ヵ月と13週と13日と満月の夜 』は魔女に身体を盗られてしまう少女のお話し。 身体を盗られてしまったクラスメイトの助けになろうとする主人公だけど、助けたと思いきや自分までも罠にはめられてしまう。 孤軍奮闘する主人公の勇敢さは息をのむものがある。 個人的には、最終的に「悪は悪のまま滅びていく」という構図もトラディショナルで好感がもてる。 というのも、悪として描かれる魔女側もその立場にたってみれば正義であるわけで。改心せず滅びるというのは、そういう意味では1つの正しさに迎合しないということでもあるのではないだろうか。 大きく印象に残るのは、大きなテーマである「老い」である。あとがきからは、著…