  サインイン | 登録

  1. ホーム
  2. 
  3. 本
  4. 
  5. アレックス・シアラー
  6. 

アレックス・シアラー『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』を読む(ネタバレあり・感想)

2022/05/07 更新 2022/05/21
mima

ファンタジー小説といえばアレックス・シアラー


日本でも人気の高いイギリスの小説家、アレックス・シアラー。

私が彼の本に出会ったのは2006年。2004年発行の『チョコレート・アンダーグラウンド』を読んだのがきっかけだった。
彼の書くファンタジー小説はワクワクとハラハラにあふれていて、本を読みながら一緒に冒険をしたような気持ちになる。
『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』は私にとって2作目のアレックス・シアラー小説だったが、10年以上の時を経て読み返しても今なお色褪せない。


『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』


わたしの名前はカーリー。いま、わたしにすごいことが起こってる…。おしゃべりで勇敢な12歳の少女、赤毛でそばかすだらけのカーリーが活躍する、ちょっぴり怖いけどハッピーエンドの物語。 
(MARCデータベースより)


『 13ヵ月と13週と13日と満月の夜 』 求龍堂 アレックス・シアラー著、 金原瑞人訳
(Amazon.co.jpより)



アレックス・シアラーの作品は主人公が男の子のものが多いが、これは珍しく少女が主人公だ。どちらにしてもー男の子でも女の子でも、本物の子どもが語っているのかなと思えるくらいアレックス・シアラーの描く「子ども」は子どもそのものである。だからこそ読み手も大人が書いていることを忘れ、自分を子どもに還して冒険の世界へ入っていけるのかもしれない。
また、金原氏の訳も自然で、難しい言い回しも読みにくい表現も使われていない。日本の小説のように違和感なく読み進めることができる。幼稚でもなければ、ただ無邪気なばかりでもない、少女の目線での語り口調に違和感を持たせない翻訳が見事だ。 

この『 13ヵ月と13週と13日と満月の夜 』は魔女に身体を盗られてしまう少女のお話し。
身体を盗られてしまったクラスメイトの助けになろうとする主人公だけど、助けたと思いきや自分までも罠にはめられてしまう。
孤軍奮闘する主人公の勇敢さは息をのむものがある。

個人的には、最終的に「悪は悪のまま滅びていく」という構図もトラディショナルで好感がもてる。
というのも、悪として描かれる魔女側もその立場にたってみれば正義であるわけで。改心せず滅びるというのは、そういう意味では1つの正しさに迎合しないということでもあるのではないだろうか。

大きく印象に残るのは、大きなテーマである「老い」である。
あとがきからは、著者自身が老いというテーマからこの作品を生んだことが読み取れる。

若いときにこれを読んだときには2,3日してから子ども時代をなつかしく思う気持ちが芽生えたものだが、すっかり大人になってから読むと歳をとることが怖くなってしまうほど老いの描写がリアルである。

「老いることを受け入れる」「老いることをも楽しむのが当然」という風潮が強くなっている現代において、老いをマイナスのものとして語ることはタブー化しつつある気がする。
けれども心の奥底には「老いにあらがいたい」「老いたくない」あるいは「もうこんなにも老いてしまった」という気持ちを多くの人が持っているのではないか。

そんなところをグザグザと突いてくるのがこの本でもある。



「たとえ全財産を盗まれたって、取りもどすことができるかもしれないし、もっとたくさん貯めることができるかもしれない。
だけど、時間を盗まれたら、もうどうしようもない。時間は過ぎ去ってゆくもの」 
(本文より)



「時間を無駄にしない」とか「効率よく」とかそういうことではなく、ただ現在を輝かしい現在として過ごそう。
自分に残された時間を大切にしよう。子どもたちには子どもらしい時間を大切にしてほしいー。
並みではあるが、そんな気持ちも芽生えるのである。

最後に拍手を送りたいのはやっぱり日本語タイトルの秀逸さだ。
原題は「The Stolen」というシンプルなタイトルであるのに対し、日本語ではガラリと変わり『13ヶ月と13週と13日と満月の夜』となっている。

何かが起こりそうな暗示めいた雰囲気がグッと増すし、「満月」というキーワードがなんとなく魔法をイメージさせるような気がしないだろうか。

そして何よりも「13ヶ月と13週と13日と満月の夜ってどういう意味なんだろう?」って気になってしまう。もちろん「13ヶ月と13週と13日と満月の夜」にはストーリー上で重要な意味があるのだけど、それは読んでからのお楽しみ。





#アレックス・シアラー, #求龍堂, #13カ月と13週と13日と満月の夜, #金原瑞人, #ファンタジー小説, #魔法, #小説, #レビュー
スコアー: 1.0
 コメント
 0 いいね
0
  信用しますか?  
0

    


NFT 123ish 3次元ゴールドコインアートコレクション




人気のコメント
最初にコメントする

ボード


サインインしてコメントを投稿する


映画「127時間」面白さ解説

重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子 ~手さぐりでの生活~

重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子 ~口蓋形成手術までの準備~

電車・バス内でのベビーカー論争への疑問と提案「駅前ベビーカー預かり所」

重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子 ~3歳・言語訓練スタート。8歳で正常構音ができるようになるまでの記録~

重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子 ~妊娠から出産まで~

重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子 ~生後4ヶ月での両側唇裂形成術~

プレバト!!で知った俳句の世界。クラシックバレエとの共通点

私の子供が3週間でお箸を上手に使えるようになった!ののじのサポート箸「はじめてのちゃんと箸」に感動

重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子 ~口唇口蓋裂と集団生活(保育園)~

重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子~小学校のみんなに知ってもらおう企画~

重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子 ~これまで、現在の様子、そしてこれから~

重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子 ~2歳での口蓋形成手術・術後の様子~

NPO法人「あなたのいばしょ」大空幸星の著書を2冊とも読んでみた感想(『望まない孤独』 『「死んでもいいけど、死んじゃだめ」と僕が言い続ける理由』)

【大阪・中ノ島】テラスが気持ちいい「OPTIMUS cafe」でヴィーガン食を考えてみた

重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子 ~Q&A よく聞かれる質問に答えます~

新型出生前診断でわかる障害。染色体異常のこどもたち<後編>

重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子~顎裂形成手術、1回目と2回目の違い~

くま好きにはたまらない!くま尽くしの『Kuma Kafe』がグローバルな秘密基地だった【大阪・天保山】

重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子~顎裂の手術(顎裂形成・顎裂部骨移植手術)にむけて②・気持ちと心の準備~

新型出生前診断でわかる障害。染色体異常のこどもたち<前編>

エンターテイナー・ビヨーンズの魅力を紐解く[制作陣編] 北野篤×BEYOOOOONDS

BEYOOOOONDSの舞台『眠れる森のビヨ』が人々の感動を呼んだワケ

【全動画まとめ】アイドルがオリジナル授業!BEYOOOOONDSの"お家でもびよんず学校"が空手&音楽&バレエ&恐竜etc.と超個性的

プライバシー設定を変更しました

記事は保存されました(投稿はされていません)

サインインして続行する

国: 日本 (jp)
  • United States (us)
  • 日本 (jp)
  • Indonesia (id)
  • India (in)
利用規約 | プライバシーポリシー | 私達に関して
よくある質問 | お問い合わせ
 
© 2025 123ish