今回は顎裂の手術に関する記録です。 顎裂とは? 顎裂とは、上の歯茎に割れ目があることです。口唇裂のみ、口蓋裂のみ、あるいは口唇口蓋裂のみで生まれる子もいますが、我が子ユウ(仮名)の場合は「“両側”完全性唇“顎”口蓋裂」であり、歯茎も前歯を挟んで左右ともに裂がある状態でした。 歯茎に割れ目があることで歯並びへの影響はもちろん、ことばを発音する際にそこから空気が抜けることにより不明瞭さにもつながります。 この割れ目を埋めるのが顎裂形成術ですが、割れ目を埋めるために腰の骨(腸骨)の骨髄を取って移植することになります。 顎裂形成・顎裂部骨移植手術については、おおよそ小学校3~4年生で行うことになると出生後すぐから聞かされていました。犬歯が生えるタイミングなどからこの時期が適切だとされているようです。もちろん個人差がありますので、具体的な時期は医師の判断のもと決定されます。 今回はこの顎裂形成術について、オペ前の準備を2回に分けて書きたいと思います。 中間顎の矯正をスタート 顎裂形成・顎裂部骨移植手術を受けるにあたり、1年半ほど前から準備がスタート。中間顎といって、前歯2本が生えている部分をできるだけ真ん中に引き寄せるための矯正が行われました。 ユウはまず右側の顎裂形成からすることになりました。生まれつき右側のほうが裂幅が大きく中間顎がかなり左側に寄っているので、手術がしやすいよう矯正していきます。 前歯のカバーとゴム 実際に装着した写真 このように前歯にカバーをし、常時装着しているプレート(口蓋閉鎖床)につけているフックと橋渡しをするように直径6mmのゴムをひっかけます。 ゴムの力で中間顎をできるだけ真ん中に寄せ、右側の空間を狭めるのが目的です。フックが上唇の裏を傷つけて出血し口内炎が起こるなどのトラブルはありましたので、その都度歯科医等に調整してもらいながらすすめます。 痛みはないようで特に嫌がることもなく、これは約1年間続けました。 その後、 前歯を直接引っ張る 前歯につけていたカバーはなくし、前歯そのものにフックを埋め込んだ土台を接着して同じようにゴムで寄せる矯正に移行。 引っ張る力をより強くするため、ゴムは直径6mmから4mmに変更となりました。 また、手術1ヶ月前の時点で寄り具合が足りなかったようで、ゴムを2本かけることと学校でも常時装着するよう指示されました。(上の写真はそのときに撮ったものでゴムを…
重度の口唇口蓋裂で生まれ、小学校3年生になったユウ。いよいよ1回目の顎裂の手術となりました。 重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子~顎裂の手術(顎裂形成・顎裂部骨移植手術)にむけて①、②・気持ちと心の準備~で書いたように、久しぶりの手術にむけて身体的にも精神的にもゆっくり準備をしてきたつもりです。 それでも、骨を取って移植するというのは大掛かりな手術。ユウ自身、苦痛や混乱はたくさんありました。 今回は入院してから手術当日までの出来事です。記録の形を取りますので簡素な文体になりますが、お読みいただければと思います。 秋の名残がある季節でした 手術前日 12時頃、2人部屋に入室。37.3℃の微熱。すぐに昼食が運ばれてくる。1時間ほどかけて完食。キッズルームがあるが、先に遊んでいる子に遠慮して入ろうとせず、暇を持て余す。DVDを観たいと言われたが、先は長いので絵本を渡す。よく見る。少し鼻水、鼻詰まりあり。声掛けをしないと水分補給をしないので注意が必要。 夕方、看護師さんよりオペの説明あり。あす12:00~手術。食事は6:00まで、水分は10:00までOK。9:00に点滴ルート確保予定。 食事をとりたいから起こしてほしいと息子に言われ、5:30に起こすことに。当然ながらそんな早朝に病院食は出ないので、買い物へ行く。 入院中は院内学級を利用することを検討していたが、いったん学校の籍を抜いて転校という扱いになるそうなのでやめておくことに。 精神的には非常に安定している。一人で寝るからお母さん帰ってと言う。看護師さんから、絶食もあるので今日明日は付き添いのほうがいいと言われる。そのあとは1人で泊まると主張。 夜になると、21時から1時間ほどモゾモゾと寝られない様子。 「鼻痛いよね」(鼻から管を入れて栄養を摂ること)「一人ぼっちになる~」など。 少なくとも明日までは一緒に寝ること、鼻の管は痛むかもしれないけど抜いちゃダメだよということを伝える。手術の痛みも気になるようで「痛いよ~」と言うので、起きたときに痛みはあるかもしれないけど、手術は寝ている間に終わることを伝える。マスクでスーハーしている間に眠ってしまうよと言うと本人もスーハーと呼吸のシュミレーションをする。眠ってしまうと言ったからか、「え、死ぬん?」と聞いてくる。否定すると笑っていた。 手術当日 5:20ごろから起こし始め、5:30に時間通り看護師さんが…
小学校3年生のユウが受けた1回目の顎裂の手術。 前回の 「重度の口唇口蓋裂で生まれた我が子~顎裂の手術(顎裂形成・顎裂部骨移植手術)①入院と手術~」 の続きになります。 手術翌日 7:00ごろ起床。元気なし。無言。しんどいかどうか聞くと、首を振る。気持ち悪いかと聞くと「うん…」。辛そう。 8:00 少し上体を起こすことに。ベッドの傾きを1段階上げたいので、好きなアニメのDVDをつける。横になったままで腕や足を使ってベッド上部までずりずりと上がってもらうが、「痛い、痛い」という。 9:00 自分で座った!「起きれたわ」と自分でも驚いたようで、少し元気が出てくる。声もはっきり出るように。身体を動かすのを痛がるが、なんとか身体拭き、着替えもできる。寝ころがっていても、しばらくすると自分で「座る」と言ってア二メを見る。 お昼前には疲れて入眠。 午睡後、同室の子が車椅子に乗っているのをみて「乗りたい」と言う。ベッドのふちに腰掛け、数歩歩いて自分から車椅子の方に向かう。術後はじめて立ちあがった。痛むので2歩ごとに休憩。車椅子で病棟内を散歩すると嬉しそうだった。 回診アリ。腰に貼っている傷口のテープが濡れて貼り替えようとするがくすぐったいのと痛いのとで大泣きで大暴れ。もう貼り替えなくていいように上から看護師さんに防水テープを貼ってもらうが、暴れすぎて半分くらいしか貼れず。点滴のシーネ取り替えが怖いのと痛いのとで震えながら泣く。 夜、抗生剤の点滴がうまく入らないのでもう一度手元のシールを貼り替えることになった。このときの担当の看護師さんが息子の意見を尊重してくれ、まったく泣かず暴れずにシール貼り替えができた! 看護師さんとの相性がいいので、腰の傷口をしっかり覆えるように防水テープも追加で貼ってもらうことに。やはりくすぐったいので「自分で貼りたい」と言い、看護師さんが手伝う形で自分で貼らせてくれた。 術後2日目 20分ほどかけてトイレまで移動。はじめて術後トイレで排尿できる。車椅子に乗りたいので移動には意欲的で、ゆっくり待てば自分で動くことができる。手伝ってほしいときは要求あり。しかし傷口の防水テープがわずかに覆ってなかったところから濡れてしまい、また貼り替えることに。また「イヤ、イヤ」とあばれる。「自分で剥がしたい」と言うが、この日の看護師さんは力づくで剥がそうとしてしまい「痛い」と余計に嫌がり30分…