ファンタジー小説といえばアレックス・シアラー 日本でも人気の高いイギリスの小説家、アレックス・シアラー。 私が彼の本に出会ったのは2006年。2004年発行の『チョコレート・アンダーグラウンド』を読んだのがきっかけだった。彼の書くファンタジー小説はワクワクとハラハラにあふれていて、本を読みながら一緒に冒険をしたような気持ちになる。『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』は私にとって2作目のアレックス・シアラー小説だったが、10年以上の時を経て読み返しても今なお色褪せない。 『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』 わたしの名前はカーリー。いま、わたしにすごいことが起こってる…。おしゃべりで勇敢な12歳の少女、赤毛でそばかすだらけのカーリーが活躍する、ちょっぴり怖いけどハッピーエンドの物語。 (MARCデータベースより) 『 13ヵ月と13週と13日と満月の夜 』 求龍堂 アレックス・シアラー著、 金原瑞人訳 (Amazon.co.jpより) アレックス・シアラーの作品は主人公が男の子のものが多いが、これは珍しく少女が主人公だ。どちらにしてもー男の子でも女の子でも、本物の子どもが語っているのかなと思えるくらいアレックス・シアラーの描く「子ども」は子どもそのものである。だからこそ読み手も大人が書いていることを忘れ、自分を子どもに還して冒険の世界へ入っていけるのかもしれない。また、金原氏の訳も自然で、難しい言い回しも読みにくい表現も使われていない。日本の小説のように違和感なく読み進めることができる。幼稚でもなければ、ただ無邪気なばかりでもない、少女の目線での語り口調に違和感を持たせない翻訳が見事だ。 この『 13ヵ月と13週と13日と満月の夜 』は魔女に身体を盗られてしまう少女のお話し。 身体を盗られてしまったクラスメイトの助けになろうとする主人公だけど、助けたと思いきや自分までも罠にはめられてしまう。 孤軍奮闘する主人公の勇敢さは息をのむものがある。 個人的には、最終的に「悪は悪のまま滅びていく」という構図もトラディショナルで好感がもてる。 というのも、悪として描かれる魔女側もその立場にたってみれば正義であるわけで。改心せず滅びるというのは、そういう意味では1つの正しさに迎合しないということでもあるのではないだろうか。 大きく印象に残るのは、大きなテーマである「老い」である。あとがきからは、著…