大成功に終わった、ラグビーワールドカップ2019年大会。
その大会の中でよく聞かれた言葉のひとつが、『ティア1』、『ティア2』という言葉。
ラグビー界において、階級を表す言葉です。
日本は現在ティア2に所属していますが、ワールドカップ2019大会ではティア1の国、アイルランド・スコットランドを倒し、世界に衝撃と感動を与えました。
この階級分けがどういった意味を持つのか。
ティア1、ティア2の区別と、その展望について解説していきます。
1. ティア(階級)とは?
ラグビーにおいて、ティアとは強さや伝統、格式をもとに分けられた階級のことをいいます。
ティア1が最上位に属しており、そのいずれもが強さを誇るだけでなく、
ラグビー界において歴史や伝統が重んじられる国々でもあります。
ティア2は、そのティア1に次ぐグループと位置づけられており、日本やワールドカップで日本と同グループであったロシア、サモアらが該当します。
その下にはティア3と呼ばれるグループがあり、ティア3についてはラグビーが発展途上の国々を指します。
この階級分けは非常に重要で、テストマッチと呼ばれる国際試合は、
基本的に同ティア内で行われるため、強豪国との対戦機会を増やすには、ティア1に昇格するほかありません。
現在ティア1に所属している国は、以下の通りです。(国名-順位)
- 南アフリカ-1
- ニュージーランド-2
- イングランド-3
- アイルランド-4
- フランス-5
- ウェールズ-6
- オーストラリア-7
- スコットランド-8
- アルゼンチン-10
- イタリア-14
南アフリカ・ニュージーランド・オーストラリア・アルゼンチンは、
“ザ・ラグビーチャンピオンシップ”と呼ばれる南半球最強を決める大会に参戦、
イングランド・アイルランド・フランス・ウェールズ・スコットランド・イタリアは、
北半球最強を決定する“シックスネーションズ”に参戦しており、
毎年最高峰レベルの試合を繰り広げる伝統国です。
アルゼンチンは、近年までティア2の国のひとつでしたが、
ワールドカップ2007年大会で3位、2011年大会でベスト8になるなど結果を残し、
2012年にザ・ラグビーチャンピオンシップへの参戦を認められ、ティア1に昇格しました。
さて、日本の所属しているティア2の国々は、以下の様になります。
- 日本-9
- フィジー-11
- ジョージア-12
- トンガ-13
- サモア-15
- アメリカ-16
- ウルグアイ-17
- スペイン-18
- ルーマニア-19
- ロシア-20
- ポルトガル-21
- カナダ-23
- ナミビア-24
ティア2にもラグビーで有名な国は多々ありますが、
この中でもワールドカップの決勝トーナメントに進出出来たのは、
日本、フィジー、サモア、カナダの4ヶ国のみです。
現在ティア1よりランキングでは上位に位置しているチームでも、ティア1の壁を越えて
決勝トーナメントに進出するのがいかに難しいかが分かります。
アルゼンチンがワールドカップで結果を残しティア1に昇格した様に、
この中からティア1に昇格するチームは現れるのでしょうか。
2. 日本のティア1への昇格はあるのか?
2015年大会でティア1の強豪国、南アフリカを含む3勝、
更には、2019年大会でプール戦ではティア1の2国を含む全勝、
念願の決勝トーナメント進出を果たした日本代表。
アルゼンチンの前例をみると、日本のティア1昇格が現実味を帯びてきました。
事実、先のワールドラグビー会長選で見事再選を果たした“ビル・ボーモント”氏は、
日本がティア1に昇格したとなれば、アジア初の快挙であり、
ラグビーの改革にも大きな影響を与えるでしょう。
欧州、南半球を中心としていたラグビーが、グローバル化していくことにも期待が持てそうです。
さて、ティア1昇格は日本にとって大きなメリットがあります。
日本ラグビー支援の増加や、ティア1の強豪国のテストマッチの機会の増加など、
日本代表の強化に非常に有利に働きます。
しかし、ティア1昇格となれば、大きな課題もあります。
ティア1に昇格すればティア1国とのテストマッチが増える分、格上との試合が自ずと多くなります。
ワールドカップでは、大会に照準を合わせて240日にも及ぶ合宿を行うなど、
日本代表は世界一の団結力を誇るチームと成ることができました。
そのため、アイルランドやスコットランドという強豪国にも勝利することが出来ました。
ですが、ティア1所属となれば1年を通して格上と対戦する必要があります。
そうなれば、テストマッチの敗戦も増える危険性は大いにあります。
その結果、アルゼンチンやイタリアのように敗北が重なり
ランキングを落としてしまう可能性は否定しきれません。
ランキングの降下は、ワールドカップの抽選に多大な影響を及ぼします。
ワールドカップの抽選はランキング上位国からシード獲得国が4ヶ国ずつ振り上げられるため、
プール戦を有利に進めるためにも8位以内に入りたいところです。
日本は現在9位ですから、何としても今季のテストマッチでランキングを1つでも上げておきたいです。
まとめ
日本がティア1入りを果たすということは、ラグビーファンにとっては大変な朗報でしょう。
ティア1に昇格しティア2の国では得られなかった恩恵を受けられることは、昔から日本ラグビーを知る方からすれば、
信じられないことかもしれません。
それほどに、ティア1の壁は高いものでした。
その壁を、僅か10年足らずで打ち破ろうとする日本代表の努力。
そして、これからの日本ラグビーへの期待。
格上と互角に戦うようになるまで時間はかかるかもしれませんが、
そんな日を夢見て、これからも日本代表を応援していきます。