2000年からスタートした介護保険も、最近では社会保険の1つとして認知され、医療保険のように保険として利用することが当たり前になってきています。
ただ、実際にいつから、どうやって保険料を支払っているのかは、意識をしていない人が多いです。知らないうちにいつの間にか引かれるようになっていたなどと言う方もいるかもしれません。
この記事では、実際どのように納めているのか?滞納などの実際にあったトラブルやその対処法などを解説したいと思います。
介護保険ってどんな制度?
医療保険もそうですが、介護サービスも全額自費で支払うとなると、かなり高額になります。毎月保険料を支払うことで、いざという時に支援を受けても負担を軽減してくれるのが介護保険です。
支援を受けるだけでなく、住宅の改修など普段の生活を安全に過ごすための費用の補助なども受けることが出来ます。
大きく分けると、年齢で2つに分けられていて
- 65歳以上の第一号被保険者
- 40歳~64歳までの医療保険加入者の第2号被保険者
に分けられます。
第一号被保険者は要介護、または要支援の認定を受ければ、介護保険のサービスを受けることが出来ますが、第二号被保険者は、特定疾病といわれる病気が原因で要介護、要支援認定を受けた時のみサービスを受けることが出来ます。
特定疾病
末期がん 関節リウマチ 筋萎縮性側索硬化症(ALS) 後縦靭帯骨化症
骨折を伴う骨粗しょう症 初老期における認知症 進行性核上性麻痺
大脳皮質基底核変性症候群及びパーキンソン病 脊椎小脳変性症 脊柱管狭窄症 早老症 多系統萎縮症
糖尿病性神経障害 糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症 脳血管疾患 閉塞性動脈硬化症
慢性閉塞性肺疾患 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
実際にどうやって保険料を納めているのか
介護保険は40歳になる前日から保険料の納付が必要になり、健康保険の一部として納めています。
そして65歳になると、健康保険とは別に介護保険料という形で支払いをします。
一定の年齢に達して終わるということはありませんので、一生払い続けることになります。
ではその支払い方法はというと、64歳までは健康保険の一部として給料から引かれたり、自分で納めたりしますが、65歳以上になると「特別徴収」と「普通徴収」の2種類に分けられます。
「特別徴収」
徴収方法…年金の支払いのタイミングである2カ月ごとに、支払われる年金から天引き
対象…年間18万円以上年金を受給している場合
「普通徴収」
徴収方法…納付書によって役所、銀行、コンビニ、口座振替などで支払う方法
対象…年金受給額が18万円以下の場合や年金の繰下げを選択した場合
通常特別徴収で納めていて、上記の条件に該当しなければ普通徴収への変更は出来ませんが、行政によっては変更可能の場合もあるので、希望がある方は相談をしてみてください。
滞納するとどうなるのか?
言っておきますが、介護保険料は絶対に滞納しないでください!!
なぜかというと、デメリットが大きすぎるからです、自分は大丈夫などと軽く考えず、しっかり納付すようにしましょう。
会社員などで給料から天引きされている場合、滞納はあまり想定できないかもしれませんが、普通徴収の方はうっかり納付を忘れてしまったり、元気なうちは関係ないから払いたくない等と払わない方がいます。
督促で済めばまだいいですが、最悪財産の差し押さえや様々なペナルティを受けるということになってしまいます。
実際に滞納をしてしまうとどんなペナルティがあるのかというと
(期限内に納付しなかった場合)
督促があり、遅延金の請求をされます
(1年以上滞納をした場合)
サービスの利用をした場合利用料を一旦10割(全額)支払はなくてはいけなくなる
※但し申請をすれば自己負担分以外は戻ってくる
(1年半以上滞納した場合)
費用の全額が自己負担になり、払い戻しを申請しても、給付の一部が差し止めとなり、滞納していた保険料と相殺される。
(2年以上滞納した場合)
2年で時効となり、未納が確定される。
そうなると自己負担が3割~4割に引き上げとなり、「高額介護サービス費」の払い戻しも受けられなくなる。
滞納した場合の対処法は?
①まずは市町村に相談を
どうしても支払いが難しい場合は、納付している市町村に相談をしましょう。
溜まっている分を分割で納付したり、減免などが出来る場合もあります。
連絡もしないでいると悪質と見なされるケースもありますので、納付が難しい場合はまず相談をしてみましょう。
事情によっては(災害や病気、失業など)免除となる場合もあります。
②世帯の分離なども検討してみる
世帯分離をすることで、介護サービスなどの自己負担を軽減することが出来ます。
しかし、健康保険などの保険料が上がってしまうケースもある為、損をすることがないように注意が必要なことと、元々がこうした負担を軽減するための制度ではありませんので、申請時は生計を別々にするためなどの最低限の説明にとどめておきましょう。
③生活保護の検討をする
生活保護を受けることが出来れば、費用の心配はなくなります。
ただし、入所等する場合、色々なことを自分で選べることは少なく、たらい回しにされることも珍しくありません。
抵抗があるからと、必要な状況でも申請しない方もいるので、そういった方はすぐに申請をした方が良いです。その時の事だけでなく先々どうなっていくのかをきちんと聞いたうえで、最終的に申請をするようにしてください。
本当にあったトラブル事例
私が介護業界17年間の中で介護福祉士や介護支援専門員をしながら、地域包括支援センターからの相談で実際に関わったトラブルですが、介護保険料を10年以上滞納し、夫は徐々に体の状態が悪くなり、寝たきりに。
妻や同居する家族が介護をしていたが限界となり、同居している家族の収入などから生活保護は難しいとされ、私のもとへ相談が来ました。ですが介護保険の利用は出来たとしても負担の割合がかなり高いまま数年利用をしなくてはいけないので、利用はできないだろうと考えました。
どうしても必要な時に、最低限の時間だけ訪問介護を保険外の自費サービスで利用し、お風呂も家族総出で何とか入れたりするなどで対応しました。ですが家族全員が金銭的、精神的、体力的にどれも負担が大きくなり、とても疲弊していました。
家族の気持ちはバラバラになり、口論になることも増え、時間と共に虐待の心配まで出てくるほどの状態に。
私はその時、初めて保険料を滞納することの怖さを見た気がしました。
結局生活保護課に相談をすることになりましたが、なんとか生活保護として入所まで受け入れてくれる自治体が見つかるまでたらい回しにされ、家族にも会えず生活をすることになりました。
まとめ
介護保険は医療保険などと違い、払い始めの内は利用しないことがほとんどなので、まだまだ先のことだと思いどんな制度かなどは気にしていないと思います。
今は昔と比べると、どの世代の方も若いです。
65歳の1号被保険者になっても、元気な方がたくさんいて介護とは無縁な方も多いですが、いざ必要な時に、必要なサービスがきちんと受けられるように、ただ納付をしているだけでなく、最低限の内容は理解してトラブルになることがないようにしましょう。