介護保険で自宅改修を一割の料金に
誰でも高齢になると、若い頃はなんでもなかった段差やトビラ、トイレやお風呂などが、体の機能の低下によってとても危険な場所となり、使いづらくなる場面が増えてきます。
そうなると、転倒して怪我をするリスクが高くなり、トイレやお風呂を使わなくなったり、不衛生な状況が続くなどして、だんだん自宅で生活を続けることが難しくなってきてしまいます。
では安全に暮らせるように自宅の改修を行なうとなると、改修費用はいくらかかるのでしょう?
あれもこれもと改修をすれば、かなりの金額になってしまいます。
しかし、介護保険をうまく使えば自宅の改修が料金の1割を負担するだけで出来てしまいます。
介護保険のサービスの中には居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)というサービスがあり、利用者がこれまで住み慣れた自宅でも安全に暮らし続けられるように、住宅内の住宅改修への支援を、介護保険によって受けることができるサービスです。
住宅を介護に適した状態に改修することで、安全に自分のことが行えたり、家族にかかる負担を減らすこともできます。
実際に私が関わった事例を交えながら、具体的な方法などを紹介していきたいと思います。
対象者
要介護または要支援の認定を受けた方
居宅介護住宅改修費の利用負担
介護保険による住宅改修の支給限度額は要介護度に関わらず20万円となっております。
そのうちの基本1割が本人の負担となります。
改修費用が20万円まで行かなかった場合は、残高分で今後の改修を行うこともできます。
逆に20万円を超えた場合は、超過部分が全額自己負担となります。
※住んでいる自治体によっては、補助が出る場合もありますので確認が必要です。
原則1回しか使うことは出来ませんが、要介護度が3段階上がった場合や別の場所に引っ越した時には再度利用できるようになります。
実際にサービスを利用する簡単な流れ
①
まずは担当のケアマネージャーさんへ相談しましょう
※このサービスは申請をして許可が出てから改修を行うというのが基本的な流れの為、先に改修をせずに必ず先に相談をしましょう。
②
ケアマネさんや改修を行う業者さん(希望があれば自分の知り合いでも可能です)と本人の状態や家族の介護の状態などをふまえて相談していきます。
③
改修業者さんに見積もりを依頼
④
ケアマネさんなどに必要書類をご準備いただき、保険者へ申請をし、許可が出次第工事が開始できます
⑤
工事が終了しましたら、一旦業者へ全額お支払いをしていただき、保険者へ領収書や写真など必要な書類を提出します。
⑥
事前申請書類と終了後の種類の確認を行い、承認されれば支給が行われます。
※改修を行う事業所は、指定業者でなくともいいと書きましたが、介護保険の住宅改修についての知識がないと、進めるにあたって時間がかかる場合があります。
なので、自分で業者を選ぶ場合もケアマネさんを入れてしっかり相談しましょう。
対象となる箇所は?
- 廊下や階段、浴室、トイレ、玄関などへの手すりの設置
- 段差解消のための敷居の平滑化、スロープ設置、浴室や床のかさ上げ等
- 滑り防止及び円滑な移動の為の床材の変更
- 開き扉、引き戸、ドアノブの交換など
- 和式から洋式への便器の変更
- 上記の改修に際して併せて必要となる改修(下地や配管、壁や床材の変更など)
※賃貸の場合でも、家主の許可があれば可能です
メリットは?
- 生活するうえで、危険だなと思う箇所や不便だなと感じる箇所へ、手摺りの設置や段差の解消をすることで、安心して生活が出来るようになり、事故などを未然に防ぐことが出来ます。
- これまで、危険、不便などを理由に自分で出来なかったことが、自分で出来るようになります。
- 自分で出来ることが多くなるので、介助者への負担を減らすことに繋がります。
- 介助者の負担が減ることで、長く在宅で生活が出来るようになります。
デメリットは?
- 住宅改修で行う段差解消やスロープの設置などは、可動式ではなく固定するという条件があります。その為、コンクリートへ穴を開けたり、セメントなどで固めたりなどする必要があります。
- レンタルするのとは違い、劣化や故障をすれば修理しなくてはいけません。
- 20万円が上限なので、それを超える工事の場合は自己負担ということになります。
改修の際のポイントや実際にあった成功体験、失敗体験
成功体験
一人暮らしで自宅は昔ながらの住宅でしたので、段差も多く、手摺りもない環境の中で、身体も弱くなり、だんだん自宅で生活するのが難しくなってきていた方がいました。
その方へ住宅改修の提案をさせていただき、生活導線の段差の解消や危険個所への手すりの設置を行うと、トイレに行くことや玄関への移動などが、安全に、安心して出来るようになり、本人も自信が出てきた様子でした。
玄関へも手すりを設置し、天気がいい日に外へ出る機会も増えてきました。
自宅での生活をあきらめ、入所を検討し始めていた方がそうした自信により、長く自宅で生活することが出来た例です。
失敗体験
自宅の庭に石段があり、車いすで入ることが難しいご自宅の庭を、車いすでもはいれるように整地し、スロープを付けたいと希望されているご夫婦がいましたが、工事の施行はご本人のお付き合いのある工務店でとのことで、お願いすることになりました。
しかし、その工務店さんは介護保険での改修は初めてだったようで、私も一からきちんと説明させていただきましたが、本来ですと申請をして、許可が出てから工事を始めるところ、申請をする前の段階で工事を始めてしまいました。
あっという間に完成させてしまい、私が知った時には、もう終わった後でした。
私は急いで市町村と話し合いをして、なんとか許可をしていただこうとしましたが、認めてもらえませんでした。
本来でしたら1割負担で出来る工事を、10割かかることになってしまいました。
慣れていない工務店さんにお願いをするときには、何度も手順を確認し、家族や業者さんに十分理解をしていただくことが必要だと痛感しました。
他にもスロープを玄関前に設置することを希望されていた方が、よく説明を聞かずに、施工段階で地面に固定することを拒否し、結局設置できなかった例もあります。
ご本人やご家族様もしっかり説明は聞き、よく確認をしながら進めることが必要です。
まとめ
在宅生活をより安全に安心して暮らすために、住宅改修を活用することはとても有効です。
本来かかる金額の1割負担で改修を行うことが出来て、専門家によるアドバイスを受けながら進めることが出来るので、失敗することも減らせます。
しかし、制度をよく理解していなかったり、話合いが不十分になると思いもよらない失敗が待っていることもあります。
急いで行わなくてはいけないケースもありますが、焦って進めることはせずに、希望を伝え、手順を確認しながら、しっかりと話し合いをして、納得のいく改修が行えるようにしましょう。