誰だっていつまでも住み慣れた自宅で生活したいと思っています。
しかし、身体が弱ってきたときに、家族以外で自分の生活を支えてくれる方がいないと、自宅で生活を続けていくのは、とても大変で、危険も伴います。
身体が不自由になったり、物忘れが出てきたときに介護サービスを利用することで、自宅で安心して生活が出来るようになりますが、 たくさんある介護サービスの種類の中で、みなさんがよく知っているサービスもあれば、あまり知られていないサービスもあるので、どれにすればいいのかわからないという方がたくさんいます。
介護のサービスは「通い」「訪問」「宿泊」
大きく分けると、この3つが基本になりますが、それぞれのサービスを利用するには、ケアマネージャーと契約をして、それぞれのサービス事業所と契約をしてからの利用となります。
それらのサービスが1つの事業所で行えたらとても便利だと思いませんか?
ここでは、そんな便利な小規模多機能について理解を深めていただきたいと思います。
●小規模多機能って具体的にはどんな施設?
- 「通い」「訪問」「宿泊」支援が1つの事業所で受けることが出来ます。 そしてその3つを、自分の生活状況に合わせて、上手に組み合わせながら支援の計画を立てていきます。
通常介護を受けようと思った場合、居宅介護支援事業所のケアマネージャーと契約をして、必要な支援について相談します。
通所をしたい場合、デイサービスやデイケアと契約をして利用日の相談をしていきます。また、ショートステイを使いたいとなった場合、別のショートステイの事業所と契約をして利用をします。
ヘルパーさんに来てもらい、訪問介護を受けたい場合も、訪問介護事業所と契約をして利用日などを決めていくなど各事業所とのやり取りになります。
しかし、小規模多機能でしたら1つの事業所と契約をするだけで、必要な介護を組み合わせながら利用することが出来
て、追加やキャンセルなどの連絡も1つの事業所へかければ済みますし、それに対しての変更などもそのまま相談でき
ます。
ます。
個人情報を色々な事業所へ知らせるリスクも軽減できます。
- ケアマネージャーも施設専属でいる為、連絡先が一つとなり変更調整や相談等の連絡がスムーズに行えます。
- 料金が月額で決まっているので、介護保険の利用限度額を超える心配がありません。かといって好きなだけ利用できるわけではありませんが、急なケガや用事などでどうしても利用を増やしたい場合に、限度 額を気にせず 計画を立てることが出来ます。
●利用に際してのメリットとデメリット
メリット
- ケアマネージャーも施設にいる為、連絡や調整の一本化が出来る
- 急遽の変更などが比較的調整しやすく、その人の状態に合わせて支援を組み合わせながら計画を立てられる
- 月額の料金体制なので、介護度に応じて決められている利用限度額を超えることがない
- 通常介護度が低いと利用できる回数も少なくなりますが、小規模では必要に応じて一時的に回数を増やすことが可能
デメリット
- 他の介護サービスと併用が出来ないので、なにか一つだけ他の事業所で支援を受けるなどは出来ない
- ケアマネージャーが施設の専属なので、すでにケアマネさんが付いている人は馴染みのある人でも変更しなければならない
- 通所や宿泊の人数は施設ごとに定員があるので、利用状況によっては利用できないない上に、上記のように他の施設を利用というわけにも いかない場合がある
- 利用頻度の低い方にとっては割高感がある
- 原則的に施設のある市町村以外の方は利用が出来ない
どんな施設でもメリットとデメリットはあります。
但し、小規模多機能は、知れば知るほど他の介護サービスよりも、出来ることの範囲は圧倒的に大きいサービスです。
今のサービスでは自宅で介護を続けることが難しいと感じる場合でも、是非一度小規模多機能へ相談をしてみることをお勧めします。
本人や家族にとって、何が優先されることなのかなど、自分たちの希望に沿った施設選びをするために、色々な施設があることを知っておくことが必要です。
●実際の活用例
上手くいったケース
ケース1
家族の仕事の都合や本人の受診などで毎週の利用日が固定できず、通所や訪問の支援予定が流動的になってしまう方が、比較的自由に組み合わせて利用が出来る小規模で安心して予定が組めるようになった。
具体的には、週3日程度通所をしながら、たまに宿泊支援も受けていたが、妻や子供の仕事の都合などで毎週のように利用曜日を変更していて、通所施設からはある程度固定してもらわないと利用が難しいと言われてしまい、入所も検討していた。
しかし、小規模多機能では、週ごとに予定を聞きながら、急遽の追加や休みなど対応してくれて、本人も家族も今の生活のペースを変えることなく、自宅での生活を続けることが出来た。
ケース2
通所日にお迎えに伺ったが、体調が本調子でないと訴えがあり、通所は休みとし午後から訪問に切り替えて様子を見に行くことにした。
通常通所が休みになった場合、通所施設にそれ以上のサービスを求めることは出来ない為、心配な場合には別に訪問介護などの支援をお願いして、自宅へ訪問してもらうことになります。
小規模多機能の場合は、その場で訪問へ切り替えることも可能で、支援の調整がスムーズで情報の抜けも少なくてすみます。
ケース3
利用の頻度が多く、毎月限度額をオーバーして、自費利用をしていた方が、小規模を利用して限度額内で利用できるようになった。
月極の為、利用の回数などによって保険料が増減することがなく、例えば一時的な身体状況の低下によって、サービスの利用量が増えても、限度額を気にすることなく必要に応じたサービスを利用することが出来る。
上手くいかなかったケース
ケース1
小規模の訪問支援は通常のホームヘルパーと違い時間が決められていないので、用件が済めば引き上げてしまいます。
利用者の中には、一定の時間滞在することで満足される方も少なくありませんので、必要なことだけ済ませたら、短時間でも帰ってきてしまうというスタイルは、満足できない方もいらっしゃいます。
そういった方には、あんまりやってくれないと感じさせてしまい、前の支援に戻したいとの希望をされる方もいます。
ケース2
登録人数が少ないうえ、他のサービスも併用できないことから利用者の方同士や職員とうまくいかなかった場合、利用がしづらくなってしまう可能性もあります。
利用者同士のトラブルのほか、支援が合わない、例えば訪問支援等1つの支援だけ他の事業所のサービスを利用したいなど、希望があった場合、併用が出来ない為元のサービスの方が良いとなってしまうこともあります。
●まとめ
小規模多機能はまだ比較的新しい種別で、数も少ないのであまり周知されていません。
ただし、通常の介護サービスと比べて、とても自由度が高いので、出来ることがたくさんあります。
その施設によって、出来ることと出来ないことに差はありますが、うまく活用することで在宅生活をあきらめていた方が、もう少し長く在宅で生活することが出来るようになる可能性があります。
実際に自分の地域ではどんなことが出来るのか施設のケアマネさんに相談をしながら、小規模多機能型居宅介護事業所も選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか?