フレディー・マーキュリー役 ラミ・マレックの繊細で緻密な演技が圧巻
イギリスの伝説のロックバンド QUEENの圧倒的でユニークなボーカル、フレディー・マーキュリーを、一体誰が演じたのだろう?未視聴の方には非常に興味があるところでしょう。
主役となったのは、イギリスの俳優、ラミ・マレック。その名を聞いて、彼の今までの代表作を言える人はどのくらいいるでしょうか?
フレディーの身長は177センチだったと言われています。ごつい身体に顔も長く、歯も出ていて、かなり特徴的な見た目であるのに対し、それを演じたラミ・マレックの印象は
「175センチもあるかなあ?しかもかなり細くて痩せていて気が弱そう..」
(私見です)と感じてしまうくらい、普段のラミは、フレディーの一番対極に居るような見た目です。普段のラミを見ていたら、
「フレディーを演じる?覇気がなさそうだし、カリスマを演じるのはもっとパワフルな人がいいんじゃない?」
と言いたくなりそうなほど、静かでおとなしい印象。ちょっと線の細い人がフレディーやってるなあ・・という感じだった事は否めません。私はフレディーの大ファンなので、
「私のフレディーを、勝手に適当な映画にしたら許さないぞー!」
くらいの気持ちで観ており、初めはミスマッチだと思いながら観ていました。フレディーの幼少期のあだ名はバッキー(前歯を意味する)。顔に比して飛び出た前歯がコンプレックスでした。
映画の中で随所に、前歯上の上唇を二本の指でおさえているシーンというのがクローズアップされているところからも、本人はとても気にしていたことが伺えます。ラミはその仕草を映画で随所に入れていました。ただ、ボーカルになってからのフレディーは歌声が変わる事を恐れ、矯正したりする事はしなかったと言われています。
映画の中では厳格な父親はいつもフレディーに冷たく、その存在を全く認めていないようでした。お母さんも生活に苦労しているようで、家の中が明るく楽しい・・という雰囲気ではなかったようです。当時イギリス領だったザンジバルの革命により、フレディー一家は安全を求めてロンドン郊外に移り住んだのです。
全てはフレディーになる為に
前歯を装着、顎を激しく落とした横顔、目力、動きの完コピで尋常じゃないパワーを表現
ライブハウスでロックバンドの演奏を観ているフレディー。
バンドのメンバーの前で歌ってみるフレディー。
茶目っ気たっぷりに笑い、偉そうな意見を言う高圧的な態度、ド派手な衣装、、
細いし小柄なままなのに、ラミ・マレックは段々本物のフレディーのように見えてきました。
それには相当な努力を要した筈です。写真に撮られている時、つまりキメのシーンやカメラアップの瞬間には必ず、横からなら、エラを意識して顎を外すように下に落とすなどの凄い努力をしている気がしました。顔の小さなラミは、少しでも顔を長く見せる努力をしていたと思います。
フレディーに外見から近付いて、この役をしっかり手中に収めたかったラミは、フレディーそっくりの付け前歯を作って貰い、それを装着して生活し、外見からフレディーの気持ち、癖、全てをフレディーに寄せていくというアプローチをしたというから驚きです。そしてそのアプローチは想像以上に功を奏していきます。
歌い方、立ち居振る舞い、話し方、振り返りの顔の角度から、イギリス訛りの英語で偉そうに話すところ、美へのこだわりも何もかも、段々本物のように感じて来るから不思議でした。映画が進めば進むほど、それは余りに本当のフレディーそのものでした!
フレディーはウェスト・ロンドンにあるアイルワース工業学校(現在のウェスト・テムズ・カレッジ)に入り、芸術を学び、イーリング・アートカレッジでは芸術とグラフィック・デザインの修了証書を得ています。それこそが、彼の独自のスタイルを産み出したこだわりのルーツであった事は言うまでもないでしょう。
ロンドンに一家が移り住んだ事で、青年期の彼の才能が一気に花開いて行く様子が手に取るように分かります。音楽が好き+芸術の経歴、まさにフレディーの音楽性の根源がここにあります。
ラミは華奢な体なのに、胸板を厚く盛るなどもしませんでした。ただ、前述しました通り、動きが異常なまでに完全コピーです。フレディのーファンなら分かる事ですが、舞台への出方、歩き方、振り向く時の顔の角度、話し方の癖・・。
ラミが完全コピーを目指したその動きは、ファンである私達の胸を打つほどのなりきりぶり。完コピのラミには感涙です。
「そうそう、フレディーなら絶対こう言うよね!」
から始まり、
「そういえば、こんな服あの時着てたよ~」
「そうそう、そのツアー、こんな事あったよね」
映画鑑賞中の私の頭の中は、フレディーの事で忙しいったらありません。
「なんかプリンス的な美意識と、独特のエレガンス、そこに、『もう全員、洋服なんて脱いじゃってよ!』みたいな王様(女王様!?)ぶり。本当にとびぬけてたけど、彼から感じる立ち居振る舞いのエレガンスさ、突き出たパワーは本当に何もかもカリスマ。女王のようだった」
「彼ってもともと女性が好きだったけど、レコード会社の上司の男性に自身を奪われてから、バイセクシャルのまま、その狭間で色々多分悩んでたんだろうな」
とか、これを観ればフレディーの全てが分かる!現実と違うところもあるかもしれませんが、映画の流れの中では、相当沢山の情報に出会える、貴重な映画です。QUEENを知らなかった人にも是非観てほしい!彼の生きざまの中で、何かがあなたの心の琴線に触れること請け合いです。
文字通りのパーティー・クイーンぶりを私生活でも発揮して、勿論そこにはドラッグもついてまわった。
フレディーはそうして自分を失いかけていったけれど、バンド仲間が怒りながら彼から離れていきつつも、最後は彼を見捨てなかったところに、やっぱりバンド仲間の愛を感じる・・まるで、その濃密な関わりぶりは、どんなに怒っても呆れても離れられない、「家族」の様でした。家族ってそんなに綺麗ごとではない。憎しみギリギリにさえなるのは、「根底に愛があるから」でしょう。
フレディー自身が一番苦しんでいた
フレディーも自身のアイデンティティに充分苦しんでいたからこそ、それを忘れる時間が必要で、忘れようとしてそれから逃れたいが為に、派手に遊んでいたように思います。
人一倍傷ついていたのは、彼の中の小さなフレディー。
子供の頃から、厳格な父親に、自身の嗜好やキャラクターは受け入れて貰えなかった。いつ家族と会っても、その性的指向も侮蔑されるようになり、家に帰る事は彼にとって、苦痛でしかなかった。両親の望む、「理想の子供」になれない事に、彼自身が人一倍傷ついていたのだろう。苦しんでいるのは、大人たちの中の、小さな子供たち。皆さんも、そんな一面、きっとあると思います。
非寛容や保護主義が再び新しい価値観として世界をリードしつつある現代社会において
イマジンを歌ったジョン・レノンとビートルズ。
横にいる人々と手を取り合うよう促し、WE ARE THE WORLDを世界に配信したマイケル・ジャクソンと、共に熱唱してくれた世界のアーティスト達。
孤児を胸に抱いてくれたダイアナ妃。そして私は、自らがAIDSである事を知りながら、アフリカの飢餓救済の為に催された、ライブエイドに参加したフレディー・マーキュリーもまた、同じだったと思うのです。
そして、全てを失った今・・。誰が、「隣人と手をつないで。愛しているよ、みんな」と言うのでしょう。
そうです、私たち一人一人が、やらなければならない。もう、彼らは、いないのです。
彼らの精神を、誰が伝えていくのでしょう。いつまで他人に任せて自分さえ良ければいいのでしょう。
その地獄に生きるのはもううんざりです。何も出来ない自分に嘆く日を、今日から決別しませんか?
何でもいいから、出来る事から行動を起こす事。ただその一点に尽きるでしょう。
私達同じ人間が、お互いに攻撃し合うのではなく、助け合い、技術を享受する事で、お互いに幸せになっていく道を、真剣に模索する事が必要なのです。自国の技術を他国が盗んだと攻撃し合う前に考えましょう。隣人の手を取り合えない事が、最大の問題です。
困っている国に、利益になる手段を教える事は、いけない事ですか?技術を、享受したっていいじゃない。自国が一番でなくてもいいんです。世界を救い合う以外に、地球が生き延びる手立てはないのですからー。
フレディー・マーキュリーと友達ダイアナ妃 一緒にゲイ・クラブにおしのびで夜遊び
面白い事に、ダイアナ妃はフレディーの友人でした。お茶目な不良娘?ダイアナ妃は、フレディーに夜遊びに連れ出してほしいとねだったのです。結果その願いは叶えられ、ダイアナ妃は男装して、フレディーと共に夜のゲイクラブに行って遊んだのですが、男装した背が高いダイアナ妃がドリンクのオーダーをしても、誰一人としてそれに気付かないまま、お姫様はゲイ・クラブでおしのびで夜遊びをしたのです(笑)
ダイアナ妃はちゃんと翌朝には、宮殿に戻っていたというのだから、驚きです!
本当にお茶目なお姫様ですね(拍手ww) 完璧な人間なんて、いない。それでいいじゃないですか。
ダイアナ妃もフレディーも、みんな愛すべき、地球上の愉快で楽しい仲間たち。
人間は、ロボットではないから完璧にはなれません。そして、それでいいのだと思います。
完璧な人間って何でしょう?
鬼のようにバッサバッサと仕事が出来、プライベートでも、自分に必要のない人間はすぐに切り捨てて、次へ行く人ー・・?
その価値観こそが、殆どの子供と大人を、傷付けていくー。
やっぱり私は、人間味が溢れた、正直な人が好きです。やる事はちゃんと出来るのに、どこかアンバランスで弱い人が好きかも知れません。そうでないと、自分が入る隙がないからです。
人の痛みが分からない人とは、一緒に居ても淋しいだけです。
誰かが完璧になれなくて泣いている瞬間に、自分の愛で助けてあげられて、その人がまた輝けるのだったらー、私はその人に欠けたその破片に、喜んでなりたい。人の痛みが分かる多くの人々は、そのように感じているのではないでしょうか?
日本に来た時は、新宿二丁目の「九州男(クスオ)」というゲイ・クラブがお気に入りだったとか・・。
フレディーの写真が飾られていたりするのでしょうか?
私一人で乗り込む勇気はないので、いつか行ってみたいと思いながらも足を踏み入れた事はありません・・。
行って話を聞いてみたいけれど。
なんだかんだと言いながらも、こんな情報がやっぱり出てしまうあたりもスターそのものですね。
こんな事を書きながらも私は、本当にフレディーの大ファンです。音楽、芸術性、ヘンなところも全て好き。好きになったら、前歯とか、関係ないですからね・・。
色んな意味での尊敬の方が、前歯を上回ります。そう、愛ですね、愛!!!
(Ⅲに続く)