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映画「ボヘミアン・ラプソディー」を通じてフレディー・マーキュリーの生涯を讃えたいⅤ

2019/02/17 更新 2022/01/06

映画「ボヘミアン・ラプソディー」事実と違うところ!?


映画自体は、「フレディーの人間性」に焦点が当たっています。事実と異なる箇所も実際かなりありました。

例えばソロデビューしたのは、ドラムのロジャーテイラーの方が先だとか、フレディーのHIV(AIDS)感染が分かったのはライブエイドの前(1985年)ではなく、二年後の1987年だったとか。

限られた時間内で映画化するには、どこかに焦点を当ててまとめあげる必要があったのだという事が分かります。

実際はフレディーのゲイ・カルチャーでの派手な奇行ぶりや、ドラッグ、酒、セックス、パーティーといった乱れた私生活、音楽性の方向などでライブ・エイド前は解散危機だったのです。




しかしそもそもクイーンの四人はそれぞれがソロ活動が出来る程の、異なる音楽性を持つ個性の集まりでした。ギターのブライアン・メイが父親と作ったところから始まるこだわりのギターが奏でる奇跡的な音色は独自の音が出せるようになっていたから、シンセサイザーに頼る事はしませんでした。

解散危機にもあったクイーンですから、ドラムのロジャー・テイラーはフレディーよりも先にソロ活動を始めていたし、ブライアン・メイとロジャー・テイラーとの音楽の方向性へのケンカの際はいつもフレディーが仲裁していたとか。

勿論フレディーの個性も含め、いつもみんなでケンカをしながら製作を続けていたそうです。それは各々の個性とプロ根性から来るもので、実際それで良い物が産まれていったようです。仕事への情熱が強いメンバーの集まりだったんでしょうね。



ロジャーの声はドラマーとはいえ、少年時代に聖歌隊で鍛えた美しいソプラノ・ボイス。本当に素晴らしい歌唱力で、それにも驚きます。「I'm in love with my car」を歌うロジャーの若いソプラノ・ボイスと激しいドラムは感動もので、1人でも充分にやっていけていたのです。


最後の恋人、ジム・ハットンを探すために電話帳で片っ端からあたるというのも事実とは異なりますが、フレディーの執拗なこだわりと執念と熱意なら、出来ない事でもやって可能にしてしまうという点で、筋としてはおかしくないと考えられます。

実際はゲイ・クラブで何回か会って、フレディーからのおごりのお酒を断っていたジムが、最後はお酒をごちそうになる事になるそんなやりとりなのですが、この映画に色濃くゲイ・カルチャーに耽溺するフレディーの様子を全部正直に出すと、観客の共感を得辛い。過剰なゲイ・カルチャーは封印して、そこは軽めに扱っている印象を受けました。


実際に知って欲しい映画のストーリーは、彼が愛を求めながらもいつも孤独で、最後はAIDSで早く亡くなるまでの深く短い一生の中で音楽への情熱を持ち続け、人生に葛藤しながら泥臭くもがいていた、人間らしい一面なのでしょう。

自分はおそらくバイセクシャルなんだとメアリーに告白した時、メアリーからは「そうじゃない。あなたはゲイよ」とハッキリ言われたそうです。



ゲイとして公の場に男性を連れ歩かない代わりに、隠れ蓑としてメアリーに来てもらっていた、という事がジム・ハットン著の本にも書いてありました。頑張って隠してきたのに、マスコミからゲイである事を派手に公表され、深く深く傷ついていた、とても弱い一人の人間だったという辺りにもあるでしょう。



「MERCURY AND ME」(フレディー・マーキュリーと私) 著者 ジム・ハットン




日本での定価は1800円でしたが、現在では出版社でも在庫も品薄で、非常に手に入れ辛い本でしたが何とか三千円以上出して手に入れました。最初は、彼の最後の恋人の男性の暴露本なのかと思っていたのですが、涙なしには読めないというような感想が多かったので、私も購入して読みましたが、結果購入してとても良かったです。

偉大なロック・スターの醜聞が、いかにマスコミの大好物だったのかはとてもよく分かりました。

沢山の人々に出会い、結果裏切られて傷ついていく人生後半のフレディーの孤独と病への恐怖が同時に襲ってくる中で、ジム・ハットンだけが彼に日々「普通の日常の幸せ」を与えていたところが、本当に感動的でした。

フレディーは観客を喜ばせる為のサービス精神が旺盛で、その努力は本当にプロだったと思います。
自分が道化役だと分かっていて、それを完璧にこなし続けるのが仕事だと彼は分かっていたのです。

そんな「観客を喜ばせる為」の彼の日常を、花で溢れさせ、彼の為に家の中の家具を作り、フレディーの喜ぶ顔を見るために庭の手入れをするジムの地味な日常は、フレディーが帰る場所を初めて提供した人なんだと分かりました。


フレディ-がHIV感染の陽性結果を受けたのは、1987年である


ライブ・エイド(LIVE AID)は1985年7月31日に行われた、「一億人の飢餓を救う」というスローガンでアフリカ難民救済の目的で行われたチャリティー・コンサートです。


映画「ボヘミアン・ラプソディー」では、1985年のライブ・エイドのリハーサルの最中にメンバーに知らされて、壊れかけていた四人の絆が強まるという流れになっていますが、実際には1987年のイースター前に、フレディー自身がHIVの検査で陽性で、治る見込みがないような内容を医者から伝えられていたのだという事がこの本から分かりました。



恋人ジム・ハットンってどんな人??


フレディーの最後の恋人ジム・ハットンはアイルランド人です。1987年のイースターの時に帰郷し、ロンドンに戻る一日前に、フレディーから「いつ帰って来る?医者からひどい事を聞かされた」と電話があったと本に書いています。



翌日帰って来たジムは、フレディーの肩にある小さな傷跡を見せられます。「親指の爪ほどの大きさで、小さく二針痕があった。」と書かれていました。彼の皮膚を取って検査をしたところ、彼はエイズだったという事です。

ジムは最初信じられず、セカンド・オピニオンを求めて別の医者に行こうと言いますが、フレディーは「無駄だよ。これ以上優秀な医者はいない」と言ったそうです。


「そのとおりだった。フレディには最高の人間に頼めるだけの力があったし、またそういう人しか受け入れなかった。
『ぼくと別れたいと言うならかまわないよ』そう彼は言った。『なんだって?』『もしきみが僕を置いてガーデン・ロッジを出ていきたいのなら止めない。その気持ちは分かるから』『だって僕はきみを愛しているんだ』。僕は言った。『きみを見捨てたりしないーどんなときだって。』」
(本文抜粋)



ぞの後、フレディーは恋人ジムにも検査に行くよう勧めますが、彼は行きませんでした。その理由がまたとても深いのです。

「僕がHIV陽性、あるいは既にエイズになっていたら、フレディーはきっと罪の意識を感じてしまうだろう。彼から感染したことはまずまちがいないのだから。検査の結果が陰性で、僕にエイズの可能性がないとしても、それはそれでフレディに悪いような気がした。まるで『ざまあみろ、僕は大丈夫だ!』というようなものじゃないか。いま一番大切なことはフレディの体に気をつけて、彼が健康でいられるようにすること、それだけだった」(本文抜粋)

ジムは献身的に尽くしました。フレディーが朝起きた時に見事な庭を眺められるように、彼の好み通りに、庭を整えました。
日本で知った鯉や、日本庭園の美しさに魅せられたフレディーは、ガーデン・ロッジ(彼の大きな庭付きの家です)に大好きなツツジを植え、とても高価で立派な鯉が泳ぎ周れるような大きな池をジムに作らせ、ジムは石を動かし、家具を作り、日々フレディーの『夢の家の実現』の為に尽くしていました。

「全てを持っている男に僕があげられるものは一体何だろう?」といつも考えていたジム。 
その答えを、ちゃんと彼は見つけていたのです。

ジムは、浮気者のフレディーに、愛を教えました。

一人で寝るのが怖い、淋しいといった理由で、若い頃から一晩たりとも一人で寝たことなどなかったフレディー。



パーティー三昧で浮気者だったフレディーに、厳しく「自分を軽く扱うな」という事を何度もケンカして伝えていました。スターだった彼が相手でも、彼の浮気相手と自分を比べて「どっちを選ぶか決めろ」と迫ったり。そして最後、ジムは「君ほどの人が、どうして僕を選んだの?」と聞くとフレディーはこう答えたそうです。

「きみは僕と闘って、僕を勝ち取ったんだよ!」


このような経過でフレディーは時間をかけて彼を信頼していき、放蕩生活にもとうとう終止符を打ち、ジムと一緒に静かにガーデン・ロッジに居る事を好むようになっていく様子が、本には細かく載っていました。

私にとって唯一救いとなったのは、誰にも決して弱音を吐かなかった多忙なビジネスマンのフレディーが、晩年、自分の気持ちを吐露出来るジムという恋人がいて、ジムから『きみがいなくては生きていけない』と言われ、自分も『じゃあ僕がどんな気持ちか分かる?』と一緒に泣くことが一度でも出来ていたという事です。 

自分の死について一緒に泣ける人が居て、淋しがりやのフレディーが動けなくなる最後まで、「僕を愛してる?」と毎日ジムに何度も聞けていたこと。フレディーが大好きなブルームーンの薔薇を大量に準備して、自らアレンジしてプレゼントしたり、彼の為の日曜大工をして、フレディーを毎日喜ばせていた事など、まるでパートナーの女性を喜ばせる男性のような甲斐甲斐しさ。フレディーは自身の友達に、

「いいだろう。僕のハズバンドがくれたんだよ」(本文抜粋)

と幸せそうに言えていたのです。


猫を家族として溺愛していたフレディー


メイクだけではない、美意識の高さ、芸術好き、バレエのような身体の動きやしなやかさ、衣装へのこだわり。彼はパフォーマーが天職でした。来日した時は伊万里焼などの陶磁器や、着物の衣装や芸者メイクなどにとても興味を持ちました。そして大金持ち故に、買い物依存症のようなところもありました。

そして自分の子供のように猫を溺愛していたフレディーの面白いエピソードがあります。


ある日一匹の飼い猫がどうしても見つからず半狂乱になったフレディ-が、日本で何時間も探してようやく買ったお気に入りの大切な火鉢を、なんと二階の窓に投げて庭に落として壊したというのです。

「愛しきデライラ」という曲がありますが、フレディーの一番お気に入りの飼い猫の名前で、旅先からも猫と会話しようと電話する程、猫を家族として溺愛していました。ジムとの生活の中に、沢山の猫たちがいました。ジムと恋人だった最後の6年間、愛の意味では幸せだったんですね。

ジムが痩せて動けなくなってしまったフレディーを持ち上げた時に、パキっというような音がしてフレディーが苦しそうな顔をして、彼の骨がそれだけで折れたのではないかとか、足があちこち壊死してしまい、酷い傷で最後は歩行も困難になる、顔にも身体にもカポジ肉腫が出来るなど、痩せるだけでなく、容貌も変わっていったなど本当に辛い話が本には沢山出てきます。

そのうちフレディの病状は見た目にもわかるようになってきた。いくつか大きな赤いあざが手のひらや左の頬にできた。カポジ肉腫と呼ばれるものである。初めのうちは特殊なレーザー治療を受けていた。するとだんだん消えていくのだけれど、ただこの治療を受けるとかすかに傷が残る。そのためフレディは人前に出るときいつもちょっとメイクをして顔の傷を隠していた。それに右足のふくらはぎにも痛々しい傷が口を開いていて、特別な薬で傷口が膿まないようにはしてあったものの、完全に治ることはついになかった。(本文抜粋)

フレディーはまるで泣き言は言わなかったそうです。フレディーがこの世を去る前までジムは、あと二人の同居人と一緒に殆ど介護をしている状態でした。最後まで愛と向き合うってこんなに辛いんだなっていう事が分かって、人間としての生き方を考えさせられるものがありました。世界で愛された世界一強い筈の男の、世界一弱くて、短くはかなかった生涯ー。

愛というものを考えさせられる大切な本になりました。





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