人生100年などと言われる時代ですが、老老介護や介護疲れ、介護離職といった問題が増加し、それが事故へも繋がります。
在宅介護は、いつ始まって、いつ終わるのかわからない事が多く、先の見えない状況は肉体的にも精神的にもとても疲弊させます。
状況によっては、老人ホームを含めた介護施設に入所するという選択肢になります。
この記事では、在宅介護等でやっていける限界の見極め方を解説します。実際に限界を迎えてしまっては、本人にも家族にとっても危険な状況になるので、「限界がくる前」に次に進むことが大切だからです。
一言で介護施設といっても、高齢者(要介護者や要支援者)が入所できる施設は、本人や家族がどのように支援を受けたいか、金額や目的、状態によって様々な選択肢があります。また、入りたいからといっても、すぐに入れないことも多いです。なので、どんな施設でどんな支援を受けたいのか、事前に本人や家族でよく話し合ったり、見たりしながら準備をしておくことが大切です。
在宅介護を続けていて、限界を感じるポイントは人それぞれ違います。この記事が、「限界になる前」に介護施設への入所等を進められる助けになればと考えています。
●実際にはどんなことが負担となるのか?
在宅介護の中で、支援者が大変だと感じることで多いのが、排泄について(失禁や不潔行為)、認知症による徘徊、外出の付き添いや送迎などが多くあげられます。
介護度が上がれば上がるほど介護に割かれる時間が多くなり、肉体的にも精神的にも金銭的にも苦痛となり、共倒れの危険が高くなります。
また、介護のことをなかなか周囲の方に相談できない方も少なくなく、兄弟などの協力が得られないと孤立になりがちです。
そうなると一人で抱え込んでしまうことになり、不安やストレスとなり、精神的な負担も増大します。
自身の生活もうまく回らなくなり、疲労がたまったて体調を崩すなど、悪循環が続いてしまいます。
●介護力や限界点は一人一人違う!
ケース1
A さんは、一人で暮らしていましたが、認知症の症状が出始めた頃から直近の出来事を忘れてしまうようになりました。
同じものを何個も買ってきてしまったり、近所の方との約束を忘れてしまったりということが続き、おかしいなと思いはじめた頃、近所の方も心配されて、何か支援を受けたらどうかと家族へ話し、私のところへ相談に来ました。
初めの相談時には将来的にも入所は否定的でした。
遠方に住んでいる家族は毎日電話をしたり、週に1回くらいの頻度で自宅を訪れたり、安全に生活が出来るようにセンサーを取り付けたりといろいろ工夫されていましたが、ある日外へ散歩に出かけて帰ってこられなくなってしまい、保護されたことがきっかけで家族もこれからの介護について検討するようになりました。
本人も一人で暮らすことに不安を感じていたとが大きかったですが、遠方に住むご家族も、当然仕事もしており、子供もいて生活があります。
現在の生活を維持しながら、Aさんが安心して自宅で生活が続けられるように支援していくことは難しく、よく話し合った結果入所をすることになりました。
入所をすることに決まった時のAさんの、「一人は不安だった」と言って安心した表情をしたことがとても印象的でした。おそらくAさんは、わからないことがどんどん増えていく中で、とても大きな不安の中、一人で生活を続けていたのだと思います。
ケース2
一方で B さんは、若いころから目が不自由で、歳を重ねるごとに、体も思うように動かなくなり、精神的にも起伏が大きくなっていたこともあり、思うようにいかないと大きな声を出してしまうこともありました。
失禁や不潔行為もあり、介護の負担はどんどん大きくなりましたが、妻に加え、娘さんも結婚し同居をしていたので、在宅介護サービスを組み合わせることで、なんとか自宅で介護を続けることが出来ていました。
それでもだんだん状態は低下していき、女性二人ではなかなか体を起こしたりすることも難しくなってきたので、家族の負担、共倒れの危険等も考え、入所という選択肢もあるということもご説明した所、妻は子供も手伝ってくれているので、、何とかこのまま自宅で見るつもりです。との返答がありました。
一見すると、Aさんは早くに入所をさせられてしまい、反対にBさんは最後まで自宅で介護をしてもらえて幸せだと思うかもしれません。
しかし、早く在宅介護をあきらめて入所をすることが悪いことでもなく、頑張ってずっと自宅で介護をすることが偉い
わけでもありません。
●限界が近いことの見極め方
介護力は、その家庭、人によって違います。
そして、どんな環境が幸せと感じるかもみんな違います。
限界と感じるところも違って当然です。
自分が限界だと感じたところ、それが限界点です。
でもそれは、大変だからと、簡単にあきらめることとは違い、本人やその周りの環境を考えて、最善の方法を選択するということです。
ただ、実際に限界まで頑張ってしまえば、共倒れ、虐待などに繋がります。
ではどうしたらいいのか?
共倒れや虐待などにつながるケースで多いのは、家族や周りの方にも頼れず、介護についての知識も不足していることで、一人で抱え込んでしまう状態の方です。
これまで普通に出来ていた介護者自身の生活、仕事や趣味、人との付き合いや一日の過ごし方などが以前とは全く違う形になってきて、辞めなければいけない、出来なくなった、息つく暇もなく心に余裕のない生活、そんなことが続いていればもう限界点はすぐそこです。次のステップを考えましょう。
●まとめ
あの人はもっと大変でも頑張っているからとか、あの人はすぐに親を入所させたからなどと比較をしてはいけません。
我慢をして続けていても、本人、家族(支援者)にとってもいいことはありません。
大変だと感じたら、回りの方、行政などに助けを求め、自分に合った方法で介護を続けていくことが大切です。
自分の生活に余裕があってはじめていい支援が出来るようになります。
入所をすることが悪いことのような認識を持たれる方もいると思いますが、A さんのように入所をすることで安心して過ごせるようになる方もたくさんいらっしゃるはずです。
各家庭によって、その家庭に合う色々な方法があっていいと思います。
我慢をして限界を超えてしまう前に、行政の介護課やお近くの居宅介護支援事業所のケアマネージャーなど専門家へ相談をして、自分に合った支援が選べるようにしていきましょう。