非ステロイド性抗炎症薬の服用は、回復を早めることになるのでしょうか?
様々な種類の非ステロイド性抗炎症薬があるが、どれが一番良いのでしょう?
調べてみると、ぎっくり腰(Acute low back pain; 日本で言うところのぎっくり腰を含む英語)に対して、非ステロイド性抗炎症薬による治療は、短期間の対処療法として優位に効果的ですが、その種類の差はあまりないと2000年に発表された論文で報告されています(Van Tulder, Maurits W., Rob JPM Scholten, Bart W. Koes, and Rick A. Deyo. "Nonsteroidal anti-inflammatory drugs for low back pain: a systematic review within the framework of the Cochrane Collaboration Back Review Group." Spine 25, no. 19 (2000): 2501-2513.)。
2008年のより新しい論文でも、非ステロイド性抗炎症薬による治療は、坐骨神経痛を伴わないぎっくり腰(acute low back pain without sciatica)への短期間対処療法として効果的でありますが、ある非ステロイド性抗炎症薬が他よりも優れているということは見られなかったと報告しています(Roelofs, Pepijn DDM, Rick A. Deyo, Bart W. Koes, Rob JPM Scholten, and Maurits W. Van Tulder. "Nonsteroidal anti-inflammatory drugs for low back pain: an updated Cochrane review." Spine 33, no. 16 (2008): 1766-1774.)。
そもそも炎症反応とはなんでしょう?
炎症反応(inflammation)と呼ばれているものの実態はとても複雑で、その反応が単に良いとも悪いとも言えないし、生理学的に様々なレベルでの現象を含んでいる包括的な言葉です(Scott, A., K. M. Khan, C. R. Roberts, J. L. Cook, and V. Duronio. "What do we mean by the term “inflammation”? A contemporary basic science update for sports medicine." British journal of sports medicine 38, no. 3 (2004): 372-380.)。
炎症反応は体内に備わっている防衛、修復機能の症状です。免疫システムが異常を検知して、外敵の排除し、またダメージの受けた細胞・組織の破壊と再構築、回復へと向かう生体反応・プロセスから現れる症状なのです。
炎症作用を非ステロイド性抗炎症薬によって抑えることがが、回復を遅らせることは無いのでしょうか?
炎症の作用を考えれば、それを抑えることで起こる長期的な回復への逆効果があることも理解できます。
非ステロイド性抗炎症薬を何時とるべきなのか?
炎症は、傷や怪我の回復に関わっているものの、その過剰な反応は周りの組織にダメージを与えて、さらなる炎症を引き起こし、これがネガティブフィードバックを起こしてしまう危険性があります。正常に戻すには、その働きを抑える事も必要です。
極端な場合、この炎症反応が短期の間の回復へと向かわず、逆に免疫システムが自分自身の細胞を外的とみなす間違いが起こると、これが慢性的な炎症となってしまいます。その一つとして関節リウマチが挙げられます。
If you are taking this drug "as needed" (not on a regular schedule), remember that pain medications work best if they are used as the first signs of pain occur. If you wait until the pain has worsened, the medication may not work as well.
もし、この薬が必要となって(常用とは別の意味で)使う場合、この薬は最初の痛みが感じられた時から使うのがベストです。もし痛みがひどくなるまで待っていたら、服用効果も低くなってしまいます。
非ステロイド性抗炎症薬により、その手に負えないネガティブフィードバックを早期の段階で抑え、程よい炎症作用による治癒、回復を促すと言ったところでしょうか。
確かに炎症が、それこそ燃え上がってしまってからでは、非ステロイド性抗炎症薬の効果は期待できなくなってしまうです。
日本であればロキソニン等の非ステロイド性抗炎症薬の早期の服用で炎症を抑え、痛みを和らげ、なるべく早めに無理のない範囲で日常生活に戻ることが、ぎっくり腰の回復、そして再発防止に効果的なのでしょう。
冷やしたり温めたりする効果は?
ぎっくり腰になったら、腰を冷やすと色々なサイトで勧められています。これは炎症を抑えることに一助があると考えられるからです。
アメリカ国立衛生研究所のサイトによれば以下のようにあります。
Hot or cold packs have never been proven to quickly resolve low back injury; however, they may help ease pain and reduce inflammation for people with acute, subacute, or chronic pain, allowing for greater mobility among some individuals.
腰を痛めた時に、温めたり、冷やしたりすることによる早期回復は証明されたことはないが、個人によっては、痛みを和らげ、短期、中期、慢性的な痛みによる炎症を抑え、より大きな動きを可能にします。
効果は個人個人の体験によるようですが、統計的には確認されていないようです。
まとめ
ぎっくり腰になったら、その過剰な炎症を抑えるのに早い段階から非ステロイド性抗炎症薬をとることで、短期的な回復にプラスになります。
ただし、長期的な抗炎症剤の服用は、長期的な組織・機能の回復に対してプラスにならないばかりか、ネガティブに働くこともあるので注意しましょう。
ぎっくり腰の早期の対処療法としての非ステロイド性抗炎症薬服用は、10日くらいでやめておいたほうが長期的な回復にプラスとなるでしょう(参照 Non-Steroidal Anti-Inflammatory Medicines (NSAIDs) by Cleaveland Clinic)。
非ステロイド性抗炎症薬の早期の服用で炎症を抑え、痛みを和らげ、なるべく早めに無理のない範囲で日常生活に戻ることが、ぎっくり腰の回復に効果的です。