今回はLGBT(レズビアン,ゲイ,バイセクシャル,トランスジェンダー)と並んでじわじわと知られるようになってきた「アライ」について書いていく。
近年、ダイバーシティ戦略を掲げる企業も着目している「アライ」。
「アライ」とは同盟や支援という意味を表す「Ally」が語源の、LGBT当事者以外の人が、LGBTを含む性的マイノリティを理解し、支援するといった考え方、あるいはそういった立場を明確にしている人を指す言葉である。
「ストレート・アライ」とも言う。日本語一言で表すと「支援者」。
もともとStraight Allianceと呼ばれるアライの活動が米国の方で盛り上がり、有名人やスポーツ選手など多くの人達からの共感を得ながら世界中に広がっていった。
2018年現在、アライの捉え方は様々だと感じる。
何かLGBTの為に行動している人こそアライだと言う人もいれば、理解を示してくれるだけでアライだと言う人もいるのだ。
例えば、野村證券でLGBT関連の講師など担当している方が、「野村證券ではアライをどのように捉えているのですが?」と質問されたのに対し、下記のように答えている。
『LGBTを理解しようとして、それを広めるために何らかの「行動」を起こしている人、と定義しています。やはり、思っているだけでは変わらないので、一歩踏み出してほしいという思いがあります。逆に小さな一歩でも、たとえば私たちが配っているステッカーをパソコンに貼ってくれるだけで、立派なアライだと思っています。』
「思っているだけでは変わらない」ので「何らかの行動を起こしている人」は確かに素晴らしいアライだと思う。
虹色やステッカーやシールを貼っている非当事者を見るだけでどれだけLGBT当事者は救われることだろう。
しかし、日本ではLGBTという言葉がやっと浸透してきたばかりで、まだまだLGBTという言葉すら知らない人が大勢いるのだ。
何か行動を起こしてくれるアライを増やすのも大事だが、LGBTについて理解を示してくれる,応援してくれるストレート・アライの母数をもっと増やすことが一番大事かと考える。
その為にはまず大前提としてLGBTのことを少しでも多くの人へ知ってもらわないと話が進まない。
【企業も注目しているアライ】
多様な人材を積極的に採用しようというダイバーシティ戦略を掲げる企業を中心に、アライに注目が集まっている。
全人口の7.6%がLGBTだと言われているものの、会社内で声を上げてカミングアウトする当時者はまだまだいない。
また、外見からの判断も付きにくいため、「周囲にはLGBTなんていない」と思っている非当事者の方も少なくない。
それによって差別やセクハラまがいなことをされて苦しんでいるLGBT当事者もいるはずだ。
こうした状況下の中、LGBT当事者がより働きやすい環境を作るために、自らが働きかけたり声を上げたりするのは困難である。
職場でのカミングアウトは多少なりともリスクを伴うから。
そんな状況を見かねて、「社内にいる92.4%を占める非当事者に、アライを増やすことが職場を変える力になるのではないか」という考え方が企業に少しずつ広まりつつあるという。
実際、「同性間のパートナー登録制度」なども採用しているLGBTフレンドリー企業の「ラッシュ・ジャパン」などは、各店舗で「LGBT支援宣言キャンペーン」を実施し、アライであることを示すステッカーなどを配布したりした。
また、企業がこぞってLGBTやアライにここまで着目し始めているのには理由がいくつかある。
まず、何も対策をせずに傍観したり放置したりしていると、LGBT当事者で且つ優秀な人材は他に流れていく可能性がある。
LGBT当事者側からすると、何も対策を講じていない企業より、LGBTフレンドリーな会社だったり、何かLGBTにとって有益な制度が設けられていたり、社内でアライ活動が浸透していたりする企業が、新卒や転職に関わらず魅力的に映る。
また、「今時何も対策,活動してないの?」とメディアや活動団体から叩かれたり目を付けられたりする可能性もなくはない。
そういったリスクもあるので、企業側はLGBTやアライに着目せざるを得ない状況でもあり、今後LGBTが社会に認知されていくと共に、この波はどんどん大きくなると思う。
また余談だが、世界最大の金融機関であるクレディ・スイスの調査によると、LGBTを積極的に支援したり雇用したりしている世界の企業「LGBT270」に選ばれた企業は、「平均的な企業の株価を年3%、6年連続で上回っている」とのこと。
LGBTに対して意識的な企業は、業績も好調であるという調査結果になる。
日本の企業も、これからますますLGBTや社内で鍵を握るアライに着目してくることだろう。
【社内にアライが多くても…】
アライが増えていく流れは、素晴らしいと思う。
ただ、「ウェルカミングアウト」な姿勢を押し付けられ、余計にカミングアウトしづらいと感じている当事者も多いはず。
社内でのカミングアウトを促すような動きは、非アクティビストなLGBTからしたら脅威かもしれない。
とはいっても、LGBTサイドに少しずつ興味を持ってくれている証拠なので、こちらとしても何か還元してあげたい。
みんながみんな、自分らしく生きれる社会が到来したら、どれだけいいだろうか。