LGBTとカミングアウト。
カミングアウトをしたことがない人もいれば、日常的にしている人もいるだろう。
自分次第なので正解とかはない。個人的には、会う人会う人全員にカミングアウトするべきではないと思っているが、誰にもカミングアウトしないという選択もまた悲しいと思っている。
例えば、職場。
ビジネスマンなら、一生のうちに会社で働く時間が最も長い。友人や家族、恋人と会う時間よりも長いのではないか。
今の職場でカミングアウトしているだろうか?
私場合、特に必要性を感じなかったので、カミングアウトはしなかった。でもしないと、異性愛者だという前提で彼女の有無や結婚観の話を聞かれるのでまぁめんどくさい。
よく、「異性愛者の男性は、自分から"私は女性が好きです"なんて言わないよね?ゲイの人だって言う必要ないんじゃない?」という綺麗事を言われれうが、確かにそれも一理ある。
だが、カミングアウトしない限り、ずっと異性愛者だと思われてしまうのも事実。。なんとも難しいところだ。
日本には何百万という会社が存在し、LGBTフレンドリーな会社もあれば、LGBTフレンドリーとは程遠い会社もある。
当然、カミングアウトしやすい環境もあれば、しずらい環境もあるだろう。
カミングアウトできる雰囲気ではなく、直属の上司やグループに隠しているために、ストレスを抱えている社員も多いはずだ。
さて、そもそも、職場でLGBTを隠すのはストレスに繋がるのだろうか?
色々調べていたところ、米国での面白い研究結果があった。
ジョージア大学で心理学を研究するRachel Williamson氏は、性的指向と関連した職場的行動についての研究結果を纏めた論文を発表した。
LGBTセンターなどで募集された89組のカップルに対し、職場におけるカミングアウトの状況を綿密にヒアリングし、それが生活に及ぼす影響や仕事へ与える影響、満足感、家庭における満足感や幸福度を調査したのだ。
結果、職場においてLGBTを隠すことは、不健康に繋がることが判明。
さらに、仕事だけでなく家庭環境にも影響を及ぼし、パートナーとの関係にも緊張をもたらしていることが分かったのだ…
研究者のRachel Williamson氏は、「職場によっては、LGBTを隠すことを求められるかもしれない。その場合には、代名詞を変える(”彼”を”彼女”にする)ことや、職場でパートナーのことに一切触れないなどの工夫をしている」と述べている。(とても共感…)
予想通りと言ったら予想通りだが、職場でLGBTを隠すことは不健康に繋がり、さらに仕事以外のあらゆる場面においてよくない影響を及ぼすのだ。
自己肯定感も低くなるのだろうか?
とはいってもなかなか職場でカミングアウトする機会もないし、リスク面も考えたら現実的に難しい。そこで、職場でカミングアウトしている人の声をネット上から集めてきた。(一部リライト)
一体彼らは、どんな理由で、どんなマインドでカミングアウトしているのだろうか?ぜひ参考にしていただきたい。
- 飲み会でよく恋人事情や結婚事情を聞かれて、その度に嘘をつくのが面倒だったから。
- 海外出張が多い仕事で、異文化交流も頻繁にあるため、多様性に対して優しい職場。カミングアウトしてもそんなに驚いてなかったし、日本は遅れすぎだと思う。
- お世話になっている上司にしっかり自分のことを分かって欲しかったためカミングアウトをしました。
- 「営業職でバリバリ働けること」アピールするため、面接の時にレズビアンであることをカミングアウトしました。今ではみんなが私のセクシュアリティを知っています。
- 恋人と3年付き合っているレズビアンです。近い内に同棲も視野に入れているため、職場のみんなに最初の段階でカミングアウトしてしまいました。今の職場はかなり居やすい環境です。
色々な理由があり、カミングアウトをしていることが分かる。
一方、職場でカミングアウトしない人の声がこちら。(一部リライト)
- 自分のセクシャリティと仕事は関係ないと思う。人間誰しも色々な顔を持っているわけであって、見せたくない顔を無理に見せる必要があるのか?
- カミングアウトすることのメリットよりデメリットの方が大きい気がする。まだまだ認知度も低いため、いちいち説明するのも面倒。
- カミングアウトせずともバリバリに仕事をこなせています。必要に迫られたら公表しますが、今はその時ではないと思っています。
- 例えばいきなりある男性が、「俺の恋愛対象は女だけです!男は無理ですが女は大好きです!」と異性愛者であることをカミングアウトしたらどう思いますか?「あ、そう」としか思わないし、どうでもいいですよね。職場での他人のセクシャリティなんてどうでもいいです。
- 特に飲み会の時に異性愛者と恋愛の話とか結婚の話とか合わせるのは大変。でもカミングアウトしたらもっと大変そうで怖い。だから隠しています。
- 一般人の理解が低い。メディアの情報の踊らされてLGBTについて勘違いしている人が多く、そんな状況下の中ではカミングアウトなんて出来ない。会社も福利厚生にLGBTの存在を想定していないし。
昨今、福利厚生にLGBTの存在を想定している会社もチラホラ出てきたが、まだまだ少ないように感じる。
私が以前働いていた会社は社員数1万人ほどだったが、LGBTの存在は完全に無視されていた。古い社風の会社だと、そもそもLGBTに対する施策なんて上層部で話されていないのではないだろうか。
■カミングアウトしないという選択肢も一つの勇気
色々述べてきたが、私が言いたいのは、「職場でのカミングアウトは正義」という話ではない。
「これ言った方が楽だな」とか「これ公表した方が仕事しやすくなるな」と思ったらカミングアウトしていいと思う。
実際、研究結果によると、ストレス値がぐんと下がるので…
ただ、忘れてはいけないのが、『カミングアウトしないという選択肢も一つの勇気』ということ。
カミングアウトする人に対し「勇気があって凄いな」と思う人が多いかもしれないが、カミングアウトしない人もまた「勇気があって凄い」のだ。
カミングアウトしないことで、「いつか上司にバレてしまうかもしれない」「いつか同期に気付かれてしまうかもしれない」とビクビクしながら生きていかないといけない。(もちろん、人によるが)
その選択が取れるということも、また勇気だ。
よって、カミングアウトするという選択も、カミングアウトしないという選択も、勇気そのものだと思う。
誰かに強制されて公表するものでもないし、ゆっくり、じっくり考えて、後悔のない選択をして欲しい。