今年は、チャールズ・チャップリン生誕130年を迎える記念の年です。そして、チャップリンの映画「ライムライト」といえば、主題歌「エターナリー」なしには語れないでしょう。
チャップリンは、チョビヒゲにシルクハット、ダボダボななりにステッキがトレードマーク。そこからは、想像もつかないまれにみる天才多才ぶりを発揮して、いまだに世界中の人々から愛されています。なによりも、親日家として有名ですね。
そのチャップリンの映画が、4月から石丸幹二主演で音楽劇として上演されます。
ここでは、「ライムライト」や「エターナリー」、音楽劇「ライムライト」についてご紹介いたします。
“チャーリー”サー・チャールズ・スペンサー・チャップリン(栄誉称号…ナイト)
チャーリー・チャップリン(別名)は、1889年4月16日イギリスに生まれました。しかし、俳優であった両親は離婚、チャーリーは母や義父兄のもとで育つことになります。
5歳のときに、体調不良の母に代わって初舞台をふむことになり、急であったにもかかわらずその芸は大喝采をあびたのでした。
母が倒れ、義父兄との困窮した生活が続くなかで、生きる為にはあらゆる仕事からコソ泥までする不幸な生い立ちにありながらも、俳優の斡旋所に通うたくましい子供でした。
その後、劇団に入るなどしてその才能を開花させます。それは、幸か不幸か子供のころの経験が大きく影響して、チャーリーの人生そのものが作風に現れていると考えられるのです。
映画「ライムライト」
1952年に公開された「ライムライト」は、いわずと知れた喜劇王チャーリー・チャップリンの名作中の名作映画です。しかも、名優かつ名監督もあるチャップリンが監督、脚本、製作、出演者、音楽を手がけています。そして、長編としてはチャップリンが初めて素顔を見せた映画でした。
原案は、チャップリン唯一の小説。のちに、「フットライト‐小説ライムライト」として刊行され大きな話題を呼びました。
なお、「フットライト」の外伝作品ととれる短編「カルヴェロの物語」では、カルヴェロが酔いどれ落ちぶれとなってしまった経緯が描かれています。
主題歌「エターナリー(Eternally)」
「エターナリー」は、映画「ライムライト」の主題歌で、ヒロインの名前であるテレーザ(テリー)から、「テリーのテーマ(Terry's
Theme)」という呼び名でも親しまれています。
ニューヨーク・シティ・バレエ団で、スターとして活躍していたアンドレ・エグレフスキーとメリッサ・ヘイドン。チャップリンは、彼らに「エターナリー」がバレエに合うか相談します。
すると、彼らは曲に魅了されすっかり惚れ込んでしまい、映画の劇中で踊られるバレエの振り付けから出演するまでにも至ったのです。いかに、「エターナリー」が「ライムライト」にふさわしく素晴らしい名曲であるかがよくわかるエピソードですね。
公開は1952年でアカデミー賞の受賞は1972年?!
「ライムライト」は、1952年当初ロサンゼンルスでは公開されず、アカデミー賞の選考基準から外れてしまいました。なぜなら、当時はアメリカと旧ソ連が冷戦の時代。「モダン・タイムス」以降、発表していた作風が「容共的である」と非難を受け、あろうことかチャップリンがアメリカから国外追放されてしまったからです。
「ライムライト」のプレミア公開の為、チャップリンがイギリス渡航中に起きた出来事でした。
その後、1972年にチャップリンはアカデミー賞名誉賞の受賞式に出席する為、晴れてアメリカの地をふむことができ、公開から20年のときを経て「ライムライト」もアカデミー賞作曲賞を受賞できたのでした。
音楽劇「ライムライト」
音楽劇「ライムライト」は、映画「ライムライト」を世界で初めての音楽劇として日本で製作され2015年に7月に初演されました。
主演のカルヴェロ役には引き続き石丸幹二が、テリー役には実咲凜音と新しいキャストで臨みます。そして、石丸幹二が歌う切なくも優しい「エターナリー」はまさに絶品!プリンスからは想像できない、酔いどれ落ちぶれた老人をどう楽しませてくれるのか、そして、物語にかかせない実咲凜音のバレエのシーンもみどころですね。
かつては、一世を風靡した落ちぶれたコメディアンのカルヴェロと、才能を秘めながら足の不自由なバレリーナのテリーが織りなす、暖かくも切なく悲しい物語。
まとめ
現在でも、色あせることなく愛されている「ライムライト」と主題歌「エターナリー」。それは、生と死と愛を描いた人間の宿命ともいえる作品でしょう。
チャップリンの作品には、どれをとっても人間の人生を切り取って描いたドキュメンタリーのような存在でもあります。
表現の自由からいえば、芸術として評価されても、政治的な理由から非難され国外追放にまで追い込むなどもっての外。時代に、逆らえなかったとはいえ、愚かな行為としかいいようがありません。
チャップリンを、チャップリンが創りあげた作品を愛する方々によって、チャップリンの名誉が挽回されたことに敬意を表します。