その前にスロバキアってどこ?
ヨーロッパ地域は我々日本人にとってはなじみ深い目的地ではありますがスロバキアは穴場中の穴場です。チェコの東側に隣接するチェコはかつてチェコスロバキアの構成国にして南側に隣接するハンガリーやオーストリアとはオーストリア=ハンガリー二重帝国の構成地域という関係を持っていました。
そんなスロバキアですが日本からのアクセスは意外に面倒なもので、モスクワで乗り継いでブラチスラバに降りない限りブダペストかウィーンなどから陸路で目指した方が速いです。参考までにブダペストから首都ブラチスラバまでの所要時間は電車で2時間ほど、ウィーンからは1時間前後です。
ニトラ
スロバキア南西部にあるニトラ(Nitra、ハンガリー語表記でNyitra)はかつてハンガリー人の多く住まう町でした。その証に第1次世界大戦後の戦後処理の一環だったトリアノン条約で解体されるまでハンガリー領だったニトラには今もハンガリー系の建築物を見ることができます。
写真の右側にうつっている教会にも城にも見えるものはニトラ城で、ハンガリー時代に築城されました。
そんなハンガリーの息遣いがどこか残っているニトラには首都ブラチスラバからは概ね2時間前後でアクセスできます。このニトラこそ、今回紹介する聖書の一節が垣間見える場所になります。
イエスが十字架にかけられたゴルゴタの丘
聖書の一節とは新約聖書でイエスキリストがゴルゴタの丘で十字架にかけられる場面を指しています。
まずはイエス自身が十字架を担いで丘の頂上まで登り、イエスキリストはそこで他の受刑者2人と共に十字架にかけられます。そこにさらに茨でできた冠を皮肉交じりでつけられ、やがて絶命してしまいます。
絶命したイエスはやがて弟子らに埋葬されますが3日後には棺の遺体がなくなっており、生前の予言の通り復活して天に昇った、というのがおおまかなアウトラインになります。
ヨーロッパではゴルゴタの丘のことを「カルヴァ―リア(英語ではカルヴァリー)」と呼ぶところが多く、また、カルヴァ―リアと名付けられた丘がヨーロッパ各地にあります。
このような丘には頂上に十字架がささっていることが多く、聖地とほぼ同格にみられていることが多いです。このような丘は実はニトラ市内にもあり、ニトラを象徴する場所のひとつになっています。
Kalvária v Nitre
ニトラ駅からきつい坂道を歩いて10分前後のところに小高い丘があり、その名もKalvária v Nitre、つまりニトラのカルヴァ―リア(ゴルゴタの丘)です。
写真を見ると手前に十字架が3つ立っており、真ん中に金色のイエスキリストの像があり、それを挟むように一緒に十字架にくぎ付けにされた受刑者2人の像があります。これはまさしく新約聖書のあのシーンそのものです。
本場ではないとは言え、小高い丘、完全に不毛ではないまでも岩がむき出しなところはゴルゴタの丘の環境にそっくりです。
それにしても写真の奥を見ると小屋のようなものが連なっているようですが実はこれは麓から頂上まで連なっています。
この小屋の中を覗くとそこには聖書の一節をイラストした絵が入っており、イエスキリストがゴルゴタの丘で十字架にくぎ付けにされて絶命するまでのプロセスを忠実に再現しています。
順番としては麓から頂上に向かうほどイエスキリストの絶命に近づくというものです。そして最後に目にするのは上の写真の十字架、だけではないのです。
頂上の終点には小さな教会がぽつりと立っていました。ニトラにはこれまで2回訪れたことがありますが内部に入れたことはまだ一度もありません。
それにしてもどこか荘厳な雰囲気の漂うこの丘ですが実は市民の憩いの場としても親しまれています。実際、ここはビュースポットとしての評判も高いです。
それではどのような風景が見えるのでしょう?
ニトラ市内はもちろん、その向こうにかつて山城のあった山まで一望できます。曇天のときはなんともいまいちな眺めですがこのような晴天ではとてもおっとりする眺めを楽しめます。
確かにこれでチルスポットとして定着している理由も納得です。
丘の裏側を眺めれば市内にいることを忘れさせられそうなほど牧歌的な風景がのんびりと広がっています。これぞヨーロッパののんびりした農業風景とでもいうべきものなのでしょうか。
特に秋口の晴天の日の夕方の丘は実におっとりせずにはいられないものがあります。夕陽がさすと写真のように枯れだした草が焼けているように映えるようになります。そして丘の小屋や小さな教会もまた焼けるオレンジ色に染められ、幻想的な光景を作り出します。
まとめ
- キリストが絶命したゴルゴタの丘はヨーロッパではカルヴァ―リアと呼ぶことが多い
- カルヴァ―リアという名前の丘は各地で見られる
- スロバキアのニトラにあるカルヴァ―リアは本場そっくり
- ビュースポットやチルスポットとして市民の憩いの場になっている
- 夕方は幻想的
ということで次の休暇にスロバキア旅行はいかがでしょうか?