その前にバラトン湖はどこ?
本題に入る前にまずは位置確認を済ませましょう。
バラトン湖のあるハンガリーはオーストリアの東側に隣接しており、そんなハンガリーの北西部のところにバラトン湖(Balatontó)は位置しています。ハンガリーの国内最大の面積を誇る湖であることからトリアノン条約で現在のクロアチア領の北部沿岸の領有権を失ってからは「ハンガリーの海」という異名がついています。
バラトン湖
沿岸の主要都市は南岸にまとまっており、東からシオフォク、ケストヘイ、北岸にバラトンフェレドなどがあり、それぞれ首都ブダペストからバスや列車で概ね2~3時間前後でアクセスできます。
バラトン湖と言えば?
大変唐突な質問ではありましたがこの後イメージを一気に覆していきます。それはさておき、この湖は保養地として名高く、とりわけ夏のバカンスシーズンになるとヨーロッパ各国、遠ければはるばるロシアから多くの観光客が訪れ、湖水浴などを楽しみます。
また、バラトン湖のある一帯は別荘も多く、特にドイツなど西ヨーロッパ方面から定年後の居住地としても選ばれるような地域にもなっています。
湖自体は陸封なのでここに生息する生物の多くが固有種であると共に過去の火山活動の名残として温泉が湧いているところが複数個所存在する、極めて独特な自然をもった湖でもあります。しかし、この地域に長いこと住んでいる親戚によると湖から離れたところにもっと面白いものがあるというのです。
岩石で織りなす不思議な地形美
バラトン地域は摩訶不思議以外に言葉が見当たらない地域です。閉ざされた巨大な湖と過去の火山活動を今に伝える温泉、そして湖から離れるとそこでさらに不思議なものを見れるというのです。その不思議なものの中に岩石で織りなす地形美がありました。
セントジュルジ山(Szentgyörgyihegyi)
まず最初に紹介するのはバラトン湖より西側に少々離れたセントジュルジ山です。ハンガリー国内では知名度の高い山のひとつで、少なくないハイカーが季節を問わず訪れています。写真は道中で撮影したものですが、それにしてもテーブルのような形に見えなくもないですね。
最初はしばらくブドウ畑を眺めながらの登山になりますが標高を上げるにつれて森に入ると突然岩石がなだれ込んだような光景を目にすることになります。
写真の右下に実は小さな穴が開いており、そこから地下から吹き上げる冷気(冬は暖かく感じる)が出ていたことから龍の吐息に例えられました。この光景もまた過去の火山活動でできた副産物のひとつだそうです。
頂上部に近づくにつれ、今度は岩石の柱のようなものが見えるようになります。
これは柱状節理と言い、日本国内では兵庫県の玄武洞などが有名です。これもまた火山活動の副産物のひとつで、厳密には岩石の柱ではなく、岩石の割れ目が縦(柱状)に入ったことでこのような形になっています。これはマグマが冷え込んで固まるときのプロセスで生じます今では緑に覆われていて分かりにくい箇所が殆どですがこの柱状節理に挟まれながら行く登山は冒険心を刺激すること間違いなしです。
クーマガシュ(Kőmagas)
続いて紹介するのはバラトン湖から北西に少々離れたところにあるナジジュレケゼィ(直訳すると大きな集まり)村にほど近いクーマガシュというところになります。
これは日本語に直訳すると「岩石+高い」になるのですが実のところずばりそれに近いものを目にすることになります。これもどうやら火山活動の副産物のようなのですが当てはまるとすればおそらく火山弾か火山岩でしょう。

森の中に巨大な岩石が積みあがったような場所を登り終えたときの様子です。写真では分かりませんが2階建て家屋に相当するかしないか程度の高さになっていました。
それにしても最初に紹介した山と比べてより大きな岩石がゴロゴロとしているところに迫力がり、冒険心をくすぐられるところです。見た目に反して足場も比較的に安定しているので歩き回りやすいですが積雪時などはよく滑るので冬季はあまり推奨はできません。
なお、写真で真っすぐに行くとそこは急な断崖のようになっていますがかつてはその先もこの岩石の積み上がりが続いていたそうです。しかし、建築物などに使う石材の需要で多くが採石され、範囲は狭まりました。また、このような場所はバラトン地域の各地で見られたのですが現存しているところはかなり少ないのが現状です。
クーテンゲール(Kőtengér)
最後に紹介するのは直訳して岩石の海を意味するクーテンゲールです。
バラトン湖がもはや見えないほど離れたところに岩石の織りなすバラトンならではの地形美があります。ここは火山活動とは違う要因で造られたものになります。
写真ではなかなか伝わりにくいですがかつてここ一帯は文字通り岩石が海のように埋め尽くされているような場所でした。今ではこのようにまばらになっていますがこれも採石の影響です。それにしてもここの岩石、本来なら陸地では見られないものを含んでいます。
クーテンゲールの岩をよく見るとこのような丸みを帯びた石がたくさん見えます。これは水流などで削られてできるものなので本来なら水中で見られるものなのですがこれはどうも海底の隆起のような地殻変動を物語っているようです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
バラトン地域を岩石の切り口で紹介させていただきましたがそれほどバラトン地域は摩訶不思議にあふれた地域です。次回ハンガリーに行かれる際にはこのように少々ひねった旅にすると発見が多いことと思います。