サンティアゴ巡礼(カミーノ・デ・サンティアゴ)の「カミーノ」は「道」を意味し、スペインの北西部にあるサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼路のことを指します。その方法は徒歩、自転車、車、など多岐に渡り、また、フランス人の道、北の道、ポルトガル人の道…など、順路もさまざまです。巡礼路に関する詳しい情報は、日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会のWebサイトを参照してください。
中世に大流行したサンティアゴ巡礼は、現代でも多くの人に愛され、多くの人がサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指し、同じ道を歩いています。この記事では、「サンティアゴ巡礼」の概要、歴史、方法などについてご紹介していきたいと思います!
1. カミーノ・デ・サンティアゴ巡礼:概要
日本でも古くから「巡礼」に似た文化がありました。例えば、四国のお遍路はこのカミーノ・デ・サンティアゴ巡礼によく似た文化であると言えます。具体的にカミーノ・デ・サンティアゴ巡礼では、なにをするのでしょうか。
一言で言えば、とにかく決められた順路に従って、徒歩でスペインの北西の街サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指すというものです。巡礼路はその出発地点によってフランス人の道、北の道、ポルトガル人の道、イギリス人の道などがあります。特に人気があるのは「フランス人の道」で、多くの人がピレネー山脈を越え、フランス南部の町からサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指します。この行程は800km以上にも及び、個人差はありますが、約30~40日間かかります。
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また、カミーノ・デ・サンティアゴ巡礼はキリスト教の巡礼文化でありながら、キリスト教徒以外にも開かれており、多くの非キリスト教徒が巡礼を行っています。
2. カミーノ・デ・サンティアゴ巡礼:歴史
カミーノ・デ・サンティアゴ巡礼の歴史は中世まで遡ります。当時イスラムに支配されていたスペインの北部で、領土奪還の動きが盛んになっていました。その戦時の際に、聖ヤコブが降臨しキリスト教徒を助けたと言います。このことから、スペイン北部のこの地域では聖ヤコブ信仰が盛んになりました。その聖ヤコブに捧げられたサンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂が、聖地として考えられるようになり、中世にはヨーロッパ各地から信徒が巡礼に訪れるようになりました。イスラム教徒の五戒とは異なり、キリスト教徒における巡礼は義務ではありません。ただ、罪を清め、天国への道をたどるために、信徒はこぞって巡礼にでかけました。
また、この頃キリスト教徒の間では「聖遺物崇拝」が盛んになっており、それらがカミーノ・デ・サンティアゴ巡礼の人気を後押ししました。聖遺物崇拝とは、聖人の身体の一部や身に着けていたものに宿る聖性に対する信仰の文化のことで、これらの聖遺物を所有している教会は一層多くの参拝者を集めました。そして、多くの人がその教会に寄付、寄進を行うことで、教会はより多くの富を獲得し、より豪華な装飾を施すことができるようになりました。そのため、カミーノ・デ・サンティアゴ巡礼路にある教会は見応えがある素晴らしい装飾を持つものが多いと言えます。
3. カミーノ・デ・サンティアゴ巡礼:方法
● 目印は「貝殻」と「矢印」!
カミーノ・デ・サンティアゴ巡礼の方法は、徒歩、自転車の二つの方法があります。どこから始めなくてはならないといった決まりはなく、自分の好きな地点を選び巡礼を開始することができます。巡礼路に沿った道には巡礼のシンボルである「貝殻」と巡礼の道順を示す「矢印」が至る所にあります。この指示に従って歩いていくことで、電子機器のなかった時代のひとも迷わずサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指すことができたのですね。
● 巡礼証明書「クレデンシャル」
巡礼者は、巡礼を開始する際にその身分証明を兼ねて「巡礼証明書(クレデンシャル)」を携帯する必要があります。この巡礼証明書は、日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会、巡礼各事務所、宿泊施設(アルベルゲ)などでゲットすることができます。この証明書はスタンプラリー形式になっており、宿泊したアルベルゲや教会、レストランなどでもスタンプを押してもらうことが可能です。このスタンプを見れば、どの街を訪れたのかがわかる、巡礼の記録にもなります。
● 巡礼者用宿泊施設「アルベルゲ」
巡礼路沿いにある街には「アルベルゲ」と呼ばれる巡礼者専用の宿泊施設があります。携帯している巡礼証明書を提示することで巡礼者向けの良心的な価格(6~10€(日本円で750円~1250円))で宿泊することができる宿もあります。
アルベルゲは通常ドミトリー形式となっており、一部屋10人程度で、一人一台のベッドが割り当てられます。キッチンが備わっているところがほとんどなので、巡礼者同士で一緒に料理をしたり、食材を分け合ったり、交流が生まれる場でもあります。
4. 不思議な魅力を持つカミーノ・デ・サンティアゴ巡礼
カミーノ・デ・サンティアゴ巡礼は徒歩で果てしない道を歩くので、体力的にも精神的にも苦しい場面が多々訪れます。私の友人も、巡礼直後は「疲れた、もう歩きたくない」と口を揃えて言います。しかし、しばらくすると不思議と「また巡礼に行きたい」という気持ちが湧き上がってくるようです。一度のみならず、二度も三度も巡礼にでかける人もたくさんいます。そんな不思議な魅力を持つカミーノ・デ・サンティアゴ巡礼。是非、一度800kmを自分の足で歩いてみてはいかがですか?