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31.Only you/鞘師里保・モーニング娘。‘19より9期・10期・11期
32.One・Two・Three/鞘師里保・モーニング娘。'19より9期・10期・11期
MCを挟み、いよいよ鞘師里保の登場が告げられると会場は一気に期待が高まる。Only youのオープニングと同時に映し出された鞘師の不敵な笑みに上がる歓声、歓声、歓声。彼女が歌い出すとまた歓声。この日最も盛り上がった瞬間がここだと言っても過言ではないだろう。
17歳の決断でモーニング娘。を退いた鞘師は語学留学・ダンス留学を経て帰国し、アップフロント(モーニング娘。らが所属する事務所)との契約を終了させた。つまりハロープロジェクトのステージにまた立ってくれるという保証はなにもない中、実現した夢のような時間なのだった。
鞘師の大ファンであると公言していた女優・松岡茉優さんはその魅力を”完璧なダンスと発展途上な歌声”と表したことがあるように、ダンスがどこでも褒め称えられるいっぽうで歌には多少ハラハラさせられる面もあった。だが卒業までのあいだに鞘師らしい魅力的な歌唱を身に付けた。
この日の鞘師はしばらくボイトレなどから遠ざかっていたこともあり歌唱力自体は落ちていたように思うものの、喉を温存できていたからか声の透明感が増し、伸びやかになっていたように思う。少しばかり不安定なフェイクも愛らしく、それでも存在感を醸し出すのはさすがとしか言いようがなかった。
(※8月に発売されたDVD/BDでは音声修正が加えられておりフェイクも安定して聴ける。だがファンには不評で臨場感のあるライブのまま収録してほしかったとの意見が相次いでいる)
そしてこのとき、会場のライトは緑に染まる。演出・照明スタッフの粋な計らいだろうか。緑は鞘師のあとに卒業した9期メンバー・鈴木香音のメンバーカラーであった。このステージに立つことはなかったが、緑の照明で9期4人の再集結を思わせた。
33.哀愁ロマンティック/道重さゆみ・譜久村聖
34.気まぐれプリンセス/新垣里沙・モーニング娘。’19より12期・13期・14期
続いてOG道重さゆみと、現役メンバーである譜久村聖の2人によるパフォーマンス。”カワイイ”系のイメージがぴったりハマるこの2人は道重さゆみの卒業コンサートでもペアで”好きだな君が”を披露した。卒業コンサートの途中で道重さゆみが脚をつり動けなくなり、予定していたセンターステージでのパフォーマンスができなくなった。そのときに譜久村聖が道重のいるメインステージまで駆け寄っていく様子がファンの間ではフクムラダッシュと呼ばれており、愛のある機転を利かせた場面として印象に新しい。
(参考:フクムラダッシュに至るまでの経緯)
そんな2014年以来の2人によるパフォーマンスは、曲こそ異なれどあのときのほろ苦さを取り返すかのようで目頭が熱くなった。
そして同じくOGの新垣里沙が登場し、プラチナ期(メディアへの露出が激減し、レッスンでスキルを磨いたことでパフォーマンス力をつけた時期。高橋愛リーダー、新垣里沙サブリーダーのこの時期のスピリッツは現在のモーニング娘。にも受け継がれている)の代表的な曲、”気まぐれプリンセス”を披露する。
このとき一緒にステージに立った12期~14期は比較的新しいメンバーである。12期は個性豊かなもののいつまでも妹っぽさが抜けず主力メンバーとは言い難いと感じているファンも多かった。だがプラチナ期のきっての実力派、ガキさん(新垣里沙)とのパフォーマンスでもバックダンサー化することなくしっかりと自分たちの色を見せつける様子からは、12期をはじめ若いメンバーの成長をひしと感じられただろう。
35.Fantasyが始まる/新垣里沙・道重さゆみ・鞘師里保・モーニング娘。’19
OGがパフォーマンスするラストの楽曲は"Fantasyが始まる"。2010年にリリースされたこの曲は特徴的なイントロで、まさに何か新しいファンタジーが始まっていくような世界観がある。9期メンバーを迎えた初ツアーのオープニングで道重さゆみが「新生モーニング娘。いきまーす!」と宣言してこの曲が始まったのもついこの間のようだ。
新生モーニング娘。としてスタートを切った鞘師が、当時のモーニング娘。を引っ張っていた新垣里沙、道重さゆみとともにOGとして舞台に立っている。現役メンバーたちや2人の偉大な先輩がいるにもかかわらず会場が赤(鞘師里保の現役時のメンバーカラー)のサイリウムで埋め尽くされた様子には思わず笑ってしまったが、モーニング娘。のファンにとってはそれだけ彼女が特別な存在だということなのだろう。
それにしても久しぶりに目の前に表れた鞘師の涼し気な目元たるや。奥二重のメンバーがアイプチなどを覚えどんどん華やかな目元になっていく中、決して派手とは言えない顔立ちを生かしたメイク。ややつり目で力強い形が強調された鞘師はなんとも魅力的だった。
36.YEAH YEAH YEAH/ハロプロ・オールスターズ
ラストを締めくくるのはハロー!プロジェクト誕生20周年記念シングルから”YEAH YEAH YEAH”。
現在ハロープロジェクトに所属するメンバー全員による楽曲だ。こういった楽曲は2010年のモベキマス(当時ハロープロジェクトに所属していたグループ、モーニング娘。、ベリーズ工房、キュート、真野恵里菜、スマイレージの頭文字を取ってつけられた)以来となる。当時に加入したてだったメンバーは、今やハロプロを引っぱっていく先輩。まだ在籍年数の若いメンバーとともにYEAH YEAH YEAHを歌い上げる。こうしてハロープロジェクトは続いてきたし、続いていくのだ。
こうして幕を閉じたOG大復活のコンサートは、間違いなくハロプロの歴史に残る舞台となった。かつて全盛期を牽引していた黄金期のモーニング娘。や派生ユニットのミニモニ。、松浦亜弥、太陽とシスコムーンなどのユニットは、現在のハロプロからは一見かけ離れているように思えるかもしれない。しかしOGたちが作りあげてきたものは間違いなく継承されており、楽曲もさまざまなライブやイベントで歌い継がれている。一番の若手グループ、BEYOOOOONDSの岡村美波は憧れのアイドルとして松浦亜弥の名前を挙げている。
追記
<1>~<3>と3回にわたってひなフェスの記事をお届けした。この記事を書いている間にも、ハロープロジェクト内ではたくさんの変化があった。研修生では出頭杏奈、小野琴己が活動を終了。アンジュルムからは勝田里奈の卒業と、新メンバーとして研修生から橋迫鈴の加入が発表された。8月にはBEYOOOOONDSが”眼鏡の男の子/ニッポンノD・N・A!/Go waist”でメジャーデビュー。
Amazon.co.jpより
”Go waist”はVilliage People、Pet shop boysの”Go west”のカバーだが
west=西ではなくwaist=腰回りを表し、ウエストを絞ろう!というユニークな楽曲。
ハロプロの”現在”はつねにめまぐるしく変動している。加入するメンバーも、卒業するメンバーも、ともに未来に向かって一歩を踏み出していることに変わりはない。
今回は3/30昼に行われたHello! Project 20th Anniversary!!プレミアム公演についてお届けしたが、販売されている同DVD/BDには同日夜のjuice=juiceプレミアム公演の一部も収録されている。
また、3/31夜に行われたモーニング娘。’19プレミアム公演のDVD/BDには、同日昼のアンジュルムプレミアム公演の一部が収録。
個人的には後者の映像も大変おすすめである。その理由はBEYOOOOONDSの平井美葉によるソロパフォーマンスが収録されていること。<2>では同グループから清野桃々姫の堂々たるソロパフォーマンスについて記述したが、研修生経験を積んできた清野とは異なり、オーディションから選ばれて加入した平井。宝塚にあこがれ、バレエやダンスの経験者ですでに表現者ではあったものの、ハロプロのステージでソロをやるのはまったくの初めてだ。
本人は「始まる前に泣きそうになった」「終わったあと泣きながら戻った」「映像を見てウワアアアと思ったが、失敗は成功のもとだから今後に繋げたい」といったことをブログで明かしていたが、最近のハロプロにはいなかった声質が生かされた楽曲で雰囲気は抜群、歌を重視し得意のダンスは控えめではあったが、これからハロプロという枠にはまらない偉大なパフォーマーへと伸びていく予感がひしひしと感じられた。思慮深い彼女の人間性もまた、それを後押ししてくれるだろう。
刻々と変わり続けているハロプロの体制やメンバー。常に現在しかない輝きをこれからも見つめ続けていたい。