ハロー!プロジェクトの12人組グループ、BEYOOOOONDS(ビヨーンズ)。
もはやアイドルグループというよりもパフォーマーというほうがしっくり来るくらい、ユニークなエンターテイメントを届けてくれている。
エンターテイナーの集まりがアイドルという肩書を借りて活動しているような錯覚にさえ陥るが、もともと彼女たちがエンターテイナーだったわけではない。むろん素質はあっただろうけども、歌やダンスが好きなアイドルにあこがれる女の子たちだった。
そんな12人を集結させてスケールの大きなエンターテイメントに昇華させるには、制作陣の創意工夫なしにはあり得なかっただろう。パフォーマンス制作に携わるスタッフ陣もさることながら、ここではビジュアル面に大きく貢献しているとある1人の人物を取り上げたい。
それは北野篤さん。博報堂ケトル所属の、つまり大手広告会社のプラナーである。
父親がビートたけし(北野武)さんであることも知られている。
母親や友だちの影響で音楽好きになり、大手CDショップでアルバイトをしていた北野篤さん。
店頭ポップを描いたりバイヤーをつとめたりした経験から、
自分の仕入れたCDをどう紹介していくのかを考えたり、それがどう売れていくのかを見てるのが面白かった
音楽以外の世界も見てみたい!! 自分はもっといろいろなことができる人間な気がする!
と感じるようになり、CDショップを辞めた約1年後に博報堂に入社する。
そこで
自分が出した企画を面白がってくれて、それを実施するためにいろんな人が動いて形になっていくっていうのがすごく面白かったので、そこで「こんな仕事もあるんだな! 面白いな!」って仕事に対する意識が変わった
と北野さん。はじめての映像の仕事はTVのCMで、そこからしばらくしてハロー!プロジェクトなどのMV制作に携わるようになる。
北野篤×BEYOOOOONDS
BEYOOOOONDS(ビヨーンズ)との仕事は北野さん自身も「キャリアのターニングポイント」になったと語るほど。MV制作やCDジャケットデザインの企画をはじめ、SNSプロモーションやグッズにも使用されるツアーロゴなどさまざまな企画を手掛ける。まさにBEYOOOOONDSのビジュアル面を語るのに外せない存在が北野篤さんなのだ。
トリプルA面シングル『眼鏡の男の子 / ニッポンノD・N・A! / Go Waist』のデビュー曲においては、ジャケット・MVだけでなく衣装も監修している。グループカラーを提示していくことになる重要なデビューシングルだ。グループの方向性に大きく関わったといっても過言ではない。
北野さんがはじめて手掛けたビヨーンズのMV。
公開時期はデビューシングル3曲が先になったが、
マイケルジャクソンやクイーンなどの
オマージュが散りばめられたこの『アツイ!』は
音楽好きの間でも話題となった。
デビュー曲『眼鏡の男の子』のMVは冒頭の寸劇を生かしたコマ割のようなカットが印象的。
イメージは「びっくりするけど、かわいい」、トーンは「自然光」を意識したという。
(Quick Japan vol.146 北野篤インタビューより)
MV監督は田村啓介氏。
『眼鏡の男の子』通常盤A(Amazon.co.jp) のジャケットは
りぼんコミックスのパロディになっている。
「たぶんモーニング娘。だったら通らなかった企画だと思うけど、
企画を出す側も通す側も”BEYOOOOONDSだからやってみるか”という空気を感じる」
と北野氏。
デビュー曲『ニッポンノ D・N・A!』
イメージは「勢い!かっこいい!」トーンは「青みがかった画」
(Quick Japan vol.146 北野篤インタビューより)
MV監督は下津優太氏。
衣裳はメンバーによって形が違うものの統一感があり、DNAがデザインされている。
衣裳スタイリストは桶田圭織氏。
デビュー曲『Go Waist』
イメージは「トンチキおもしろい」、トーンは「コントラスト強めで粗い感じ」。
ウエストブルブルマシーンを紹介する通販番組 「Beyond Shopping」 では小林萌花さんのセリフもあったが、
ただニコニコしているだけのほうがおもしろいとなり全カットとなった。
(Quick Japan vol.146 北野篤インタビューより)
ダイエットソングということで、ビリーズならぬサヤーズブートキャンプが登場。
MV監督は植+北 氏。
『Go Waist』ミュージックビデオ内で現れた通販番組「Beyond Shopping」は
ダイエットグッズだけでなくBEYOOOOONDSのグッズも扱っているらしい。
怪しげな通販番組の形式をとったグッズ紹介動画は無駄に完成度が高い。
ちなみに2022年現在もまだやっている。
こうして見ていくと、BEYOOOOONDSの「普通のアイドルではできないことを試せるメンバーの心意気、プロデューサー側の包容力」と北野篤さんの座右の銘「くだらないけど面白いものを作りたい」が異様なまでにマッチしていることがわかる。
実際に北野さん自身もこう語っている。
BEYOOOOONDSさんのMVは、自分の好きなこととグループの雰囲気が合致した感覚があるし、そのうえで面白いものができてる気がします。
1stアルバムのジャケットも北野チームによるデザイン。
Blu-rayつきの初回生産限定盤Aのジャケットには、
電車や恐竜、バレリーナなど周りには”メンバーの好きなもの”が散りばめられている。
コラージュ風のタイトルデザインも新しい。
ブックレットにはメンバー×好きなものが1人1人載っている。
中のCDケースは懐かしのアナグリフ画像が印刷されており、
付属のめがねに赤と青のセロファン(これも付属している)を貼ると
3D画像を楽しめるようになっている。
ラジオドラマつきの初回生産限定盤Bは、少女漫画特別創刊号のオマージュになっている。
収録されている曲のタイトルがすべて表紙(ジャケット)に書かれていたり、
よく見ると”CHICA#TETSU(チカテツ)”の周りには線路と電車が、
”雨ノ森 川海”には傘と雨がデザインされているなどかなり細かい。
中身も盛りだくさんで子どもの頃にワクワクした付録を思い出させる。
上の1stアルバムを引っ提げて行ったライブDVDのジャケットは
アルバム初回限定盤Aとお揃いのデザインだが、
こちらはライブ写真を使用しておりより臨場感にあふれる。
北野篤×BEYOOOOONDS の最新作
2020年、先ほどの1stアルバムを引っ提げてツアーを発表していたBEYOOOOONDSだったが、コロナ騒動もあって中止に。
2022年の春にようやく1stツアー『どんと来い!BE HAPPY!』を実現させた。
サーカスを思わせるツアーロゴはグッズのTシャツにも使用されるなど、1stツアーのメインビジュアルに。
この日程表も北野さんチームによるデザインで、ファンからも「見やすい!」と好評だった。
ほかにもツアーロゴを用いたスマートフォン用壁紙などがSNSで配布された
BEYOOOOONDS『英雄~笑って!ショパン先輩~』MV
MV監督は今原電気氏。
BEYOOOOONDS『ハムカツ黙示録』MV
MV監督は植木秀治氏。
シングルだと『英雄~笑って!ショパン先輩~』『ハムカツ黙示録』が最新の作品になる。
メンバーによれば、『英雄~笑って!ショパン先輩~』はエモーショナルな、『ハムカツ黙示録』はいい意味でバカな仕上がりにしたいと北野さんから話があったそうだ。
意図したとおりに”ショパン先輩”では楽曲のスケールの壮大さも相まってホロリと泣けるような仕上がりになっているし、”ハムカツ”ではスナイパーがハムカツを撃ち込んで幸せにするという謎設定とMV本編ではなくラストに本物の爆破を持ってくるという構成にわけがわからなくなりながらもリピートが止まらない作品になっている。
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BEYOOOOONDSのMVはほかにも2ndシングル『激辛LOVE』『Now Now Ningen』『こんなハズジャナカッター!』、そしてKAGOMEコラボ曲である『ビタミンME』『フレフレ・エブリデイ』が発表されている。
どれも工夫を凝らした作品であるが、あえておすすめを挙げるなら北野篤さん自ら”代表作”ともいう『ビタミンME』。
BEYOOOOONDS『ビタミンME』
これはダンスシーン以外はすべてワンカットで撮るという手法で、それによりBEYOOOOONDSのもつ演劇的要素を全面に押し出した作品となっている。(ちなみにワンカットシーンは『こんなハズジャナカッター!』でも使用されている。)
KAGOME野菜ジュースとのコラボとのことでビタミンカラーでいっぱいのMVは、この公開時期に閉鎖的な”おうち時間”を過ごしていた人にたくさんの元気を与えた。
エンターテイナーなアイドルグループBEYOOOOONDS。その世界観を創っている制作陣の工夫に今後もより一層注目したい。
引用:音楽ナタリー 「くだらないものが好き」な北野篤のアイデアがハロプロにもたらしたもの
参考:ケトルキッチン「BEYOOOOONDSを知っていますか?」
参考:ケトルキッチン「KAGOME × BEYOOOOONDS「ビタミンME」です。」
参考:BEYOOOOONDS/雨ノ森川海 高瀬くるみブログ「ハムカツ、食う!」
(Amazon.co.jpより)