前回は、生後4ヶ月のときに行った口唇裂の手術について記しました。
今回は口蓋裂の手術について、まずはそれに至るまでの経緯を書きたいと思います。
1~2歳で行われる口蓋形成手術
口蓋裂の手術は一般的に1歳~2歳までの間に、だいたいは体重が10kgを超えてから&一人歩きができるようになってから行われます。
ことばを覚え、発語が盛んになるころ、口蓋形成手術を行い口蓋の裂をふさいでおくことで発音が良くなりやすいと考えられています。ただ、あまり早い時期にすると口蓋の発育を阻害するため、その子の言語発達や成長の具合を見てちょうどよい時期に決定されます。
口蓋形成手術の方式は2種類
口蓋裂の手術方式には2種類あります。
1つはプッシュバック法、もう1つはファーラー法(ファーロー法)です。
プッシュバック法は簡単に言うと口蓋の粘膜を中央に寄せ、後方にずらす方法で、裂幅が広い場合に行われます。粘膜をずらしていくため、部分的に粘膜の欠損が生じます。
ファーラー法は口蓋の筋肉をつなぎ、粘膜をZ状に縫い合わせる方法で、裂幅が狭く自前の粘膜が十分にある場合に限り可能です。骨の露出がとても少ないこと、上あごの発育障害が少ないことなどがわかっています。
我が子の場合の手術時期決定
さて、我が子ユウの場合です。
形成外科・歯科への定期受診時に、口蓋形成手術の時期についての話がのぼりはじめたのは1歳3ヶ月ごろからでした。
ただユウの場合は、全体的に成長がゆっくりで言語発達も遅く、この時点でまだ発語はありませんでした。
そのため、医師は”口蓋裂の手術は遅らせてもいいだろう”という見解でした。
体重も、2歳ちょうどの時点でようやく10kgになったところでした。
2歳5ヶ月になったころ、矯正歯科医から形成外科の医師にむけて「そろそろ口蓋形成手術を行ってはどうだろう」という打診があり、形成外科医がそれに応じる形で手術日を決定しました。
手術は3ヶ月後、2歳8ヶ月でプッシュバック法で行うことになりました。
このように手術時期は患者の状態をみながら、形成外科・歯科・口腔外科など複数の科の医師が相談した上で決定されることが多いようです。
滲出性中耳炎チュービングを同時に
ちなみに、口蓋裂をもつ患者の多くが滲出性中耳炎を併発するといわれています。
ユウも2歳6ヶ月のときに左耳の滲出性中耳炎が判明しました。
滲出性中耳炎の治療は鼓膜にチューブを挿す手術が一般的で、乳幼児は全身麻酔となります。全身麻酔の回数を極力減らしたかったため、左耳のチュービングは口蓋形成手術と同時にしてほしいと要望しました。
口蓋裂の手術は形成外科医、チュービングは耳鼻科医が行いますが、手術を行うのは総合病院だったためこのあたりの連携はスムーズなようで快諾してもらうことができました。
チュービングの手術はだいたい15~30分で終わるため、先にチュービングを行ってから口蓋裂の手術にバトンタッチするそうです。
手術20日前…シーネの型取り
手術に向けての具体的な準備は20日前からはじまりました。
まずはかかりつけの矯正歯科にてシーネの型取りからです。
シーネとは、口蓋裂手術後に傷口を保護するために口蓋に縫い付けるプレートのこと。子どもの口蓋の形に合わせて作るため、ホッツ床と同じように型取りを行います。
手術18日前…術前検査、形成外科診察
手術を行う総合病院で、術前検査および形成外科の診察がありました。
まずは血液検査、レントゲン撮影。
生後4ヶ月の口唇裂手術のときは台に寝かせ両腕両足両頬を固定されてのレントゲンでしたが、もう一人で立てるようになったため、大人と同じように立って撮影しました。
そして麻酔科の医師から全身麻酔の説明。
口蓋裂の手術の場合、麻酔の管を入れているのも喉、オペでいじるのも喉、なおかつそこで呼吸をしなくてはならないし、ユウは小顎症(顎が小さい)もあるため、手術中に舌が喉に落ち込み喉を塞いでしまうリスクもあるとのことでした。
形成外科での診察ではプッシュバック法で行うことなど、改めて手術の説明がありました。
手術10日前…シーネを受け取り
矯正歯科にて、出来上がったシーネを受け取り、試着しました。
手術7日前~4日前…発熱そして解熱
余談ですがこの時期になって38.1℃の発熱。
形成外科医にも歯科医にも、「風邪をひかさないように」と念を押されていたにもかかわらず、この時期になって不調が出てしまいました。もちろん、手術前なのでいつも以上に気をつけているのですが…。
抗生物質と解熱剤を服用させたり、頭を冷やしたりしてようやく熱が下がりました。
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