部活のオーケストラやアマチュア・オーケストラ。今は、楽器初心者でも、気軽にオーケストラを体験することができます。
ですが、いざオーケストラに入るにあたって、「自分にはどの楽器が合うんだろう……?」と悩む初心者も多いのではないでしょうか。
今回は、オーケストラに入ったら弦楽器を考えている初心者向けに、各弦楽器パートの特徴や向をまとめました。楽器初心者が勘違いしやすい、2ndヴァイオリンやヴィオラの魅力はお見逃しなく。
メロディを弾きたい・リーダーシップを取りたい人におすすめ!1stヴァイオリン
「オーケストラ」そして「弦楽器」とくれば、まず真っ先に目に止まるのがこのパート。初心者の中には、弦楽器の花形に思う人も多いかもしれません。
メロディが弾きたい、ヴァイオリンならではの高音域でのびのび歌いたい、なんならコンサート・マスター(オーケストラ全体を仕切るトップ奏者)になりたい……そんなリーダー・シップを撮りたいあなたにはぴったり。
ですが、リハーサル中、何かと指揮者に捕まりやすいのも1stヴァイオリンの常。後述するパートももちろん、要所要所に「ここは指揮者に捕まるぞ」と脅される箇所がありますが、1stヴァイオリンは特に顕著です。
また、楽曲がクライマックスに向かうときは、加線だらけのトンデモ高音域をがむしゃらに弾きまくる場面も。これはこれでけっこう楽しいのですが、慣れないうちは「私はいま、一体なんの音を弾いてるんだろう……」と目が遠くなるかもしれません。
アンサンブルの妙を味わいたい人におすすめ!2ndヴァイオリン
個人的にヴァイオリン好きの初心者に一押ししたいパート、それが2ndヴァイオリンです。
オーケストラやアンサンブルの醍醐味と言えばヴィオラ、そして2ndヴァイオリンだと、筆者は考えています(ヴィオラについては次の項目で解説します)。
1stヴァイオリンの華やかな高音域を、その1オクターヴ下、初心者でも弾きやすくて、しかもいい音の出る音域で支えてあげる。そんな美味しいパートは2ndヴァイオリンだけ!
また、2ndヴァイオリンが寄り添うパートは1stヴァイオリンだけではありません。特に同じ内声パートであるヴィオラとは、一緒に刻んだり、中音域の美しいメロディをハモったり、仲良しこよしの関係。
もちろん、初心者の中には、いかにもヴァイオリンらしい、高音域のメロディや華麗なパッセージを演奏する1stヴァイオリンに憧れる気持ちもあるでしょう。ただ、そう言ったパッセージは正直、オーケストラでなくても経験できるのです。ソナタ、コンチェルトと言った伝統的な楽曲や、ちょっとしたポップスのアレンジ楽譜を手にとってみると、そう言ったヴァイオリン「らしい」楽曲がたくさんあります。
せっかくオーケストラに入るのなら、自分ひとりではない、誰かと一緒に演奏する(=アンサンブルする)楽しみを味わえる、そんなパートを選んでみるのも大事ではないでしょうか?
ただし、2ndヴァイオリンに限らず、どんなパートも時々鬼のようにえげつない難所が出てきます。モーツァルト作曲「魔笛」の序曲などはその代表例ですが、そんな時は腹をくくってさらいましょう。
オーケストラを影で支配する、黒幕になりたいあなたにおすすめ!ヴィオラ
ここまで読んでくださった初心者のあなたは、ぜひ、ここで一つ知っておいて欲しいことがあります。
それは、オーケストラで一番偉いパートは、ヴィオラである──ということです。
部活では特に、
「ヴァイオリンは人が足りてるから、ヴィオラで入ってくれない……?」
「ヴァイオリンが弾けるなら、ヴィオラもちかえてくれない……?」
と上目遣いでお願いされがちなパートですが、はっきり言って失礼にもほどがあります。
確かに、ぱっと楽譜を見たとき、目立つようなメロディは少ないかもしれません。同じような音形や、パート譜だけでは「コレどんな曲なの?」と眉をひそめたくなるような白玉のオンパレードだったりします。
ですが、そういった内声の動きこそが、オーケストラ全体の音楽を突き動かす重要な推進剤になります。
また、音数が少ないということは、逆に、楽器初心者でも弾くこと自体はそこまで難しくない、ということになります。
1stヴァイオリンのような高音域・多い音数に悩まされて、ひたすらパッセージの練習に没頭するのも乙なものです。
でも、初心者だからこそ、せっかくオーケストラに入るのなら、誰かと演奏する楽しみを味わいたいと思いませんか?
また、クラシック音楽の作曲家たちは、ヴィオラやチェロといった低音楽器の扱いを熟知していました。名曲と呼ばれる作品であればあるほど、内声部・低声部に美味しいところをたくさん用意してくれています。
- 単なる刻みかと思いきや、実はそこはヴィオラしか弾いていない!
- なんだか変な臨時記号だなあと思いきや、実はヴィオラだけがその音を弾いていた!
なんてことはザラにあります。しかも、作曲家によっては、まさかのタイミングで美味しいメロディを弾かせてくれるかも知れません。
有名なブラームスの交響曲なんて、ここぞ!という時にヴィオラが重要なメロディを弾いていたり、初登場のメロディをヴィオラに任せていることもありますよ。
オーケストラ、そしてアンサンブルの妙を味わうなら、間違いなくヴィオラや2ndヴァイオリンがおすすめです。
ただ、初心者にとっては譜読みが大変(ト音記号ではなくハ音記号)のため、いくらか難易度が高いのも事実です。初めは音の一つ一つにドレミを振るなどして、少しずつハ音記号に慣れていきましょう。
痒いところに手が届く、貴重な人材になりたい人におすすめ!チェロ
「チェロやってくれるの!?ありがとう!」と、高確率で言ってもらえる、圧倒的人手不足のパート。それがチェロです。
なかなか人が足りない……という点はヴィオラも似ています。しかし、ヴァイオリン奏者によるもちかえもできないチェロは、大抵のアマオケ・部活で人手が足りていません。
そのくせ、とってもとっても美味しいところ取りのパート。ヴァイオリンにヴィオラ、そして管打楽器……オーケストラの全ての楽器を支えているのは、このチェロとコントラバスなのです。
音域が低いけれども、ひょっとすると、1stヴァイオリン以上にリーダーシップを求められるパートです。内声部が、アンサンブルを濃く、複雑に織り重ねる役目だとすると、チェロやコントラバスといった低声部は、織物全体の枠や形を決める、型紙のようなもの。
目立つ方ではないけれど根がしっかりしている。案外、自分にはがんこなところがある。そんなあなたにおすすめのパートです。
吹奏楽にだって参加できる!低音好きにオススメ・コントラバス
プロのオーケストラ奏者の中には、「コントラバスの発音が聞こえてから音を出せ」という人もいるほどの存在。それがコントラバスです。
何と言っても、音が低い。その音域は、チェロのそれのさらに1オクターヴ下です。その大きな身体から伝わってくる響きは、まるで地響きのよう。ピンとこない方は、コントラバス独特のあの、深くて大きなピッツィカート(指で弦を弾く奏法)を一発聞いて見てください。惚れます。
また、弦楽器の中では唯一、吹奏楽にも組み込まれているパートであることもポイント。吹奏楽にも興味がある初心者の方は、コントラバスも有力な候補です。
おまけ:ここぞという時に目立ちたい、唯一無二の存在・ハープ
オーケストラ1麗しい演奏姿、ハープ。ただし、出番が極端に少ないのでそこはご承知おきください。チャイコフスキー・ワーグナー・マーラー、この辺りを好んで演奏したがるオーケストラが狙い目です。
まとめ・初心者はどんなパートも難しい。でも……
まとめると、
「どのパートも初心者には難しい!」
ということになりますね。
はっきりと「このパートは初心者向け」とオススメすることは、やっぱり不可能です。なぜなら、ここまで解説してきた通り、どのパートにもそれぞれの特徴・楽しみがあり、難しさがあるからです。
でも、あなたの性格や好み、オーケストラに求めるものに合わせて、パートを選ぶことはできます。
あなたにぴったりの弦楽器は、果たしてどのパートでしたか?