人気者のチューヤン まだ就学前の、幼い頃だったと思う。周りの人からチューヤンと呼ばれているおじさんがいた。いつもふらっと現れて、近所をうろついていく。あまり覚えていないが、家の前で遊んでいた私たち子どもたちともいろいろ話していたのだろう。私はというと、チューヤンの姿を見つけると家に帰り、祖母に来ていることを告げていた。すると、祖母は家の中にあるお菓子を集めて半紙で包み、私に手渡す。 「チューヤンにあげてきて」。 それがいつもの行動パターンだった。なにかを手渡すのはうちだけでなく、近所の友だちの家からもいろいろ持ってきていたように思う。それは、子どもであったりおとなであったり。 チューヤンは、ある意味、人気者だった。 弱者だったチューヤン おとなになってから考えてみると、今でいう“ホームレス”だったのではないか。ホームレスとしての住処はどこかにあり、気が向いたり、何か必要になったら、顔見知りの多いうちの周りに現れていたのだろう。 おそらく戦争の焼け跡に整備された町で、三軒長屋と呼ばれるような住居が建ち並ぶ下町の風情を残していた。呼び名は、チューヤンなのか、ちゅうやん、ちゅやん、なのか。実は、長年、「チ…